インド国民年金制度(National Pension System - NPS)とは?
NPSとはインド国民が安全で合理的な市場リターンを通じて効果的に老後資金を計画できるようにするために、インド政府によって提供されている年金制度です。
加入者は、現役時代に年金口座に定期的に拠出し、将来の生活を保障することができ、途中で一部を一括で引き出すことも可能です。雇用主負担の拠出と従業員負担の拠出の2種類があり、基本的には所属する企業が銀行で開設したNPS口座を通して毎月積み立てを行います。
日本の年金制度とは異なり加入は強制ではなく、任意となっています。NPSと似て非なる制度として従業員積立基金(Employee Provident Fund - EPF)がありますが、EPFは従業員数が20名以上の組織では強制加入となります。
NPSへの拠出を通して利用可能な税額控除
①雇用負担の拠出額
雇用主負担の拠出額は従業員の基本給(Basic Salary)の10%を限度に従業員の年間課税所得額から控除することが可能です(インド所得税法第80CCD条2項)。
②従業員負担の拠出
従業員負担の拠出額は50,000ルピーを上限に従業員の年間課税所得額から控除することが可能です(同法第80CCD条2項)。さらにNPSの拠出は同法第80C条の税額控除の対象です。第80C条の税額控除とは、外国人であっても利用しやすい税額控除のひとつであり年間15万ルピーを上限に一定の機関等への拠出額を年間課税所得額から控除することが可能になります。一定の機関等の拠出には、生命保険やEPFへの拠出がありNPSへの拠出もその対象です。
一定期間後に本国への帰任が決まっている駐在員の方々にとってはNPSへ拠出するメリットはそこまで大きいとは言えませんが、インド人従業員にとっては税額控除を利用しながら年金を積み立てられるため魅力的な制度となっています。NPSへの拠出を検討される場合には、まずは会社としてインドの銀行でのNPS口座開設手続きが必要になります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |