会社を設立するまでにかかった費用は日本の会計基準では「創立費」と呼びますが、インドでは「Preliminary expense」と呼びます。インドに現地法人を設立する際には日本親会社がインド市場調査費用や法人設立費用を立て替えて支払うことが一般的ですが、これらの費用は法人設立後にインド現法で損金算入できるのでしょうか?
Preliminary expenseのインド所得税法での取り扱い
インド所得税法第35D上では「事業開始前」または「事業開始後に事業拡大または新しいユニットの設立」に関して発生した以下の費用は5年間で均等に損金算入する旨を規定しています。なお、35D条3項では一定の場合の損金算出可能額の上限を定めています。
(a)以下に関連する支出
(i)実現可能性を検討する報告書(feasibility report)の作成
(ii) プロジェクト報告書の作成
(iii) 市場調査、その他業務に必要な調査の実施
(iv) 事業に関するエンジニアリングサービス
(b) 法人設立または事業開始の目的で締結される契約書の作成にかかる弁護士費用
(c) 会社である場合には以下の支出も含まれる
(i) 会社の定款の作成にかかる弁護士費用
(ii) 定款の印刷にかかる費用
(iii) 会社法の規定に基づいて会社登記するための手数料
(iv) 公募による会社の株式または債券の発行に関連し、引受手数料、仲介手数料、目論見書の起草、タイプイング、印刷および広告のための費用
(d) その他の支出項目(所得税法の他の規定で税額控除等の対象となる支出ではない)で規定されるもの
これらのPreliminary expenseは会計上は設立初年度で一括費用計上することが一般的な一方で、税務上は5年で損金算入ですので、繰延税金資産(Deferred Tax Asset - DTA)が計上されます(Accounting Standard (AS) 22 Illustration I)。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |