日本法人がインドの子会社である現地法人や販売代理店を起用して、自社の製品をインド国内で販売する取引は多く見られます。この場合に、現地法人や販売代理店が日本法人の代理人PEに認定され、インド当局から日本法人が課税される可能性はあるのでしょうか?
代理人PE(Agency PE)とは?
日印取引に関する恒久的施設(Permanent Establishment - PE)は日印租税条約第5条が規定しており、以下のいずれかの行為を販売代理店等が行う場合は代理人PEと認定されます(日印租税条約第5条7項)。
①契約締結行為:代理で契約を締結する権限を有し、これを反復して行使する行為
②在庫管理行為:物品または商品の在庫を反復して保有し、これを代理で引き渡す行為
③注文取得行為:専らまたは主として当該企業(グループ)のために反復して注文を取得する行為
ただ、独立の地位にある問屋などが販売代理行為を執り行い、独立代理人(Independent Agency)となる場合はPEとはなりません(同条8項)。
一定の場所PEはインドに事業を行う一定の場所を有しているという事実に基づいて認定される一方で、代理人PEはビジネス上の関係によってPE認定される点が異なります。また日印租税条約の代理人PEの認定条件はOECDモデル条約の認定条件より広く認められていることに注意が必要です。
なお上記の見解はインドの一般的な代理人PEの考え方です。より厳密なPEの認定リスクの判定には、販売代理店等の行う営業活動の内容や日本法人のインドでの取引等の詳細な検討が必要になります。
PE認定されるた場合の課税
日本法人がインドでPE認定された場合、当該PEに帰属する所得が事業所得として日本法人がインドにて課税されます(日印租税条約第7条)。外国企業である日本法人に課される法人税率は40%と高く、その他に教育目的税、サーチャージも加算され、本事業所得に関してはインド側で税務申告を行う義務も発生します。
日本法人にはPE認定リスクを抑える工夫や、PE認定のリスクを踏まえた上で日印取引の設計を行うことが必要となります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |