納税者は月次、年次でGSTの申告を行いますが、GST監査(GST Audit)ではその申告内容が正しいか、備え置き書類が正しく保管されているかどうか等を確認する手続きが行われます。GST監査は大きく分けると下記の2通りに分かれます。
- インド勅許会計士によるGST監査
- GST税務当局によるGST監査
インド勅許会計士によるGST監査
年間売上が2千万ルピーを超える納税者はGST年次申告(GSTR9)を、5千万ルピーを超える納税者はGST年間調整表(GSTR9C)を作成の上、翌年の12月31日までに申告する必要があります(CGST法第44条、CGST法細則第80条)。従前までは、これらはインド勅許会計士によってGST監査として、法定の財務諸表監査とは別で行われておりましたが、2021年国家予算案で納税者自らがGSTの年次申告を行うことが提案され、インド勅許会計士が行うGST監査は廃止となりました。
GST税務当局によるGST監査
GST税務当局によるGST監査は下記の2種類に分かれます。これらの監査はGST税務当局が主導して会計帳簿との突合せやGST計算書の確認等を通して納税者の申告内容をより精査するために執り行われる監査ですが、前者は税務調査官が、後者は税務当局に任命された会計士が執り行う点で異なります。
- GST監査(Audit by tax authorities)
- GST特別監査(Special Audit)
GST監査(Audit by tax authorities)
GST税務当局のコミッショナー又はコミッショナーにより任命された者は、納税者に監査開始の15日以上前にGST ADT-01という様式の通知を出した上でGST監査(Audit by tax authorities)を始めることができます(CGST法第65条1項、CGST法細則第101条)。この監査は開始から3か月以内に終える必要がありますが、合理的な理由がある場合はコミッショナーが必要に応じて監査開始より6か月まで、GST監査の期日を延長できます。GST監査が始まると、納税者は税務調査官から会計帳簿等の提出を求められので、適宜開示できるよう日頃から各証憑は適切に保管しておく必要があります。
GST監査の結果は、30日以内にGST ADT-02という様式で納税者に通知されます。GST監査の結果、未納付、過少納付、誤還付、誤利用された仕入税額控除が発見された場合には、同法第73条または74条に基づき、GST DRC-01という様式の情報開示を求める通知(Show Cause Notice)やGST DRC-06という様式の更正処分通知(Summary of the order)が納税者に発せられます。
GST特別監査(Special Audit)
GST税務当局による精査、調査、捜査等の手続きの中で、事案の性質、複雑さおよび税務当局の歳入の利害を考慮した際に、アシスタントコミッショナーより上位の職位の税務調査担当官が価値が正しく申告されていない、又は通常の範囲以上の仕入税額控除が使用されているという意見を持った際には、事前にコミッショナーからの同意を得た上で、GST特別監査(Special Audit)を始めることができます(CGST法第66条1項、CGST法細則第102条)。GST特別監査では、GST ADT-03という様式の通知で監査の開始が、GST ADT-04という様式で監査の結果が納税者に伝えられます。該当する年度に関して、既にGST監査(Audit by tax authorities)が実施済みである場合でも、GST特別監査の対象となることはあります。
GST特別監査では、税務調査官の任命したインド勅許会計士又は原価会計士が会計帳簿等を精査し監査します。実際にGST特別監査をするのはインド勅許会計士又は原価会計士ですが、それらの会計士の費用はコミッショナーが負担することになります。任命された会計士は90日以内に、税務調査官に署名済みの監査報告書を提出する必要がありますが、アシスタントコミッショナーは必要に応じ、この期間をさらに90日延長することもできます。
GST特別監査の結果、未納付税額、納付不足税、誤った還付税額、誤利用された仕入税額控除が発見された場合には、同法第73条または74条に基づき、GST DRC-01という様式の情報開示を求める通知(Show Cause Notice)やGST DRC-06という様式の更正通知(Summary of the order)が納税者に発せられるのは、GST監査(Audit by tax authorities)と同様です。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |