GSTの税務調査(Scrutiny Assessment)の対象となると、GST税務当局は納税者に対してASMT-10と呼ばれるフォームで通知します(CGST法第61条1項、CGST法細則第99条)。その後税務調査の結果として、GST税務当局が納税者に対して更正処分を下す場合には、その前段階としてGST税務当局は情報開示を求める通知(Show Cause Notice)を納税者に発行し、把握している未納付や過少納付の原因の説明を求める必要があります。よって、情報開示を求める通知(Show Cause Notice)を受け取った場合は、税務調査が更正処分通知(Final Order)が発行される1つ前の段階まで進んでいることを意味します。
GST DRC - 01 の発行(FY2023-24まで)
GST税務当局は納税者に対して情報開示を求める通知(Show Cause Notice)をGST DRC - 01というフォームで発行します(CGST法第73条1項、第74条1項、CGST法細則第142条1項a)。この税務通知の発行される根拠条文は「未納付や過少納付が納税者に不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽以外の原因によるか」、「未納付や過少納付が納税者に不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽の原因によるか」で異なり、前者はCGST法第73条、後者はCGST法第74条が根拠条文となります。
「不正行為等が疑われていない税務調査(CGST法第73条)」又は「不正行為等が疑われている税務調査(CGST法第74条)」なのかで、FY2023-24までの税務調査に関しては、更正処分通知(Final Order)が発行されるまでの手続きの流れが変わってきます。以下では、「不正行為等が疑われていない税務調査(CGST法第73条)」に基づいて説明します。
不正行為等が疑われていない税務調査(CGST法第73条)の場合のGST DRC - 01 受領後の対応(FY2023-24まで)
納税者はGST DRC - 01でのGST税務当局の指摘内容に不服がない場合には、未納税額等とその延滞利息をGST DRC - 01の発行日から30日以内に納税します。30日以内に納税する場合は、本税務調査に関してペナルティが科されることはありません(CGST法第73条8項)。納税者は納税した旨をGST DRC- 03というフォームで当局に申し出る必要があり、当局はGST DRC- 05というフォームで本案件が完了したことを納税者に連絡します(CGST法細則第142条3項)。
一方で、当局の指摘内容に不服がある場合は、納税者自身の見解をGST DRC- 06というフォームで当局に提出することができます(CGST法細則第142条4項)。納税者の支払うべき未納税額等、その延滞利息及びペナルティ額が決定されると、GST税務当局は更正処分通知(Final Order)としてGST DRC- 07を発行します(CGST法第73条9項、CGST法細則第142条5項)。GST税務当局がこの更正処分通知(Final Order)を発行できるのは該当年度のGST年次申告の期日から3年までです。
この更正処分通知(Final Order)に対して納税者が異議申し立てを行う際は、コミッショナーアピールや税務訴訟手続きに進むことになります。
FY2024-25以降の税務調査
GST の税務調査は日本の税務調査に比べて、税務調査の段階にてGST税務当局の担当官が納税者の申告内容や会計帳簿を調査する期間が短く、納税者と十分に議論される前に更正処分通知(Final Order)が発行されてしまう傾向にあります。FY2023-24までの「不正行為等が疑われていない税務調査(CGST法第73条)」の場合、情報開示を求める通知(Show Cause Notice)の発行期日は更正処分通知(Final Order)の発行期日の 3 か月前までと規定されています(CGST法第 73 条 2 項)。
逆に言えば、情報開示を求める通知(Show Cause Notice)が発行されてから、納税者として GST 当局に説明できる期間がわずか 3 か月しか用意されていませんでした。そこで、2024 年度財政法では、CGST 法第 74A 条を新たに設定し、2024 年度以降の税務調査の運用規定を変更しました。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |