GST税務調査通知である情報開示を求める通知(Show Cause Notice)や更正処分通知(Final Order)をGST税務当局から受領したものの、当時の経理担当者が会社を去っており、税務通知対応に苦難するケースが散見されます。GST税務当局は何年分まで遡って、情報開示を求める通知(Show Cause Notice)や更正処分通知(Final Order)を発行できるのでしょうか?
税務通知の発行期日(FY2023-24まで)
まず情報開示を求める通知(Show Cause Notice)はGST DRC - 01、更正処分通知(Final Order)はGST DRC- 07というフォームで発行されます(CGST法第73条1項・9項、CGST法細則第142条1項a号・5項)。
納税者の不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽以外の理由に基づいて発行される税務通知の場合には、GST DRC - 01の発行期日はGST DRC- 07の発行期日の3か月前まで(該当年度のGST年次申告の期日から2年9か月まで)(CGST法第73条2項)、GST DRC- 07の発行期日は該当年度のGST年次申告の期日から3年までです(同条10項)。
納税者の不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽の理由に基づいて発行される税務通知の場合には、GST DRC - 01の発行期日はGST DRC- 07の発行期日の6か月前まで(該当年度のGST年次申告の期日から4年6か月まで)(CGST法第74条2項)、GST DRC- 07の発行期日は該当年度のGST年次申告の期日から5年までです(同条10項)。
上記の通り、各税務通知の発行期日は該当年度のGST年次申告の期日を起点として規定されているため、各年度の年次申告の期日が重要となります。基本的には年次申告の期日は翌年の12月31日ですが(CGST法細則第80条1項)、年度によっては通達でその期日が変更になっていることもありますので、まずは各年度の年次申告の期日を下記の通りまとめます。
該当年度 | 年次申告の期日 | 根拠条文等 |
FY2017-18 |
GSTの登録州で下記の通り異なります。 Chandigarh, Delhi, Gujarat, Haryana, Jammu and Kashmir, Ladakh, Punjab, Rajasthan, Tamil Nadu, Uttar Pradesh, Uttarakhand:2020/2/5 Andaman and Nicobar Islands, Andhra Pradesh, Arunachal Pradesh, Assam, Bihar, Chhattisgarh, Dadra and Nagar Haveli and Daman and Diu, Goa, Himachal Pradesh,Jharkhand, Karnataka, Kerala, Lakshadweep, Madhya Pradesh, Maharashtra, Manipur, Meghalaya, Mizoram, Nagaland, Odisha, Puducherry, Sikkim, Telangana, Tripura, West Bengal, Other Territory: 2020/2/7 |
2020/2/3付の間接税・関税中央委員会(Central Board of Indirect Taxes and Customs - CBIC)発行のNotification No.06/2020 – Central Tax |
FY2018-19 | 2020/12/31 | 2020/10/24付のCBIC発行のPress Release |
FY2019-20 | 2021/3/31 | 2021/2/28付のCBIC発行のNotification No.04/2021 – Central Tax |
FY2020-21 | 2022/2/28 | CGST法細則第80条1A項 |
FY2021-22 | 2022/12/31 | CGST法細則第80条1項 |
FY2022-23 | 2023/12/31 | CGST法細則第80条1項 |
FY2023-24 | 2024/12/31 | CGST法細則第80条1項 |
次に税務通知の発行期日を下記の通りです。
<不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽以外の理由に基づく税務通知の場合>
該当年度 | GST DRC-01の発行期日 | GST DRC-07の発行期日 |
FY2017-18 | 2023/9/30 | 2023/12/31※1 |
FY2018-19 | 2024/1/31 | 2024/4/30※2 |
FY2019-20 | 2024/5/31 | 2024/8/31※2 |
FY2020-21 | 2024/11/30 | 2025/2/28 |
FY2021-22 | 2025/9/30 | 2025/12/31 |
FY2022-23 | 2026/9/30 | 2026/12/31 |
FY2023-24 | 2027/9/30 | 2027/12/31 |
※1 2023/3/31付CBIC発行の通達No. 09/2023-Central Taxで延長
※2 2023/12/28付CBIC発行の通達No. 56/2023-Central Taxで延長
<不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽の理由に基づく税務通知の場合>
該当年度 | GST DRC-01の発行期日 | GST DRC-07の発行期日 |
FY2017-18 | 2024/8/5または8/7 | 2025/2/5または2/7 |
FY2018-19 | 2025/6/30 | 2025/12/31 |
FY2019-20 | 2025/9/30 | 2026/3/31 |
FY2020-21 | 2026/8/31 | 2027/2/28 |
FY2021-22 | 2027/6/30 | 2027/12/31 |
FY2022-23 | 2028/6/30 | 2028/12/31 |
FY2023-24 | 2029/6/30 | 2029/12/31 |
GST税務当局は、上記の期日までであれば過去に遡って情報開示を求める通知(Show Cause Notice)や更正処分通知(Final Order)を発行できるため、GSTの申告内容やその計算根拠を適切に保管、管理しておくことが求められます。
税務通知の発行期日(FY2024-25以降)
2024 年度財政法では、CGST 法第 74A 条を新たに設定し、2024 年度以降の税務調査の運用規定を変更しました。2024 年度以降の税務調査通知の発行期日は、「不正行為等が疑われていない税務調査」又は「不正行為等が疑われている税務調査」のいずれなのかによらず、下記の通り一律の期日が設定されています。
GST税務当局は、該当年度のGST年次申告の期日から42か月までにGST DRC-01を発行する必要があり(CGST法第74A条2項)、加えてGST DRC-01が発行されてから12か月までに更正処分通知(Final Order)であるGST DRC-07を発行することが求められています(CGST法第74A条7項)。また、GST税務当局の担当官がGST DRC-07をGST DRC-01が発行されてから12か月までに発行できない場合は、GST DRC-07の発行期日は追加で最大6か月の期間延長されます。よって、GST DRC-07の発行期日は最大で該当年度のGST年次申告の期日から5年(60か月=42か月+12か月+6か月)となります。
<FY2024-25以降の税務通知の発行期日>
該当年度 | GST年次申告の期日 | GST DRC-01の発行期日 | GST DRC-07の発行期日 |
FY2024-25 | 2026/12/31 | 2030/6/30 | 2031/6/30(最大2031/12/31) |
FY2025-26 | 2027/12/31 | 2031/6/30 | 2032/6/30(最大2032/12/31) |
FY2026-27 | 2028/12/31 | 2032/6/30 | 2033/6/30(最大2033/12/31) |
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |