法人Aから法人Bに対して物品・サービスの提供を行う際に、物品・サービスの提供過程で法人Aに交通費やホテルの宿泊費が発生することがあります。これらの経費実費分を法人Aから法人Bに経費精算する場合、GSTを課税した上で請求する必要があるでしょうか?
2種類の経費精算
経費精算費用は下記の①②に大別することができますが、結論から申し上げると①はGSTを課税した上で請求することが必要である一方で、②はGSTを課税せず請求が可能です。
①物品・サービスの提供過程で供給者が負担した付随費用であり、手数料、梱包費、旅費などの形で発生した費用。
②供給者が純粋な代理人として負担する費用で、CGST法細則第33条の要件を満たす費用。例えば、政府に支払う登録料や税金、受領者が供給者に発生を許可した第三者輸送業者に支払う輸送料などが含まれます。
供給価額を構成する経費精算額と構成しない経費精算額
CGST法第15条は物品・サービス提供の供給価額(Value of Supply)を規定しており、下記の金額は供給価額に含まれます。
- 供給に関して供給者が支払う義務があるが受領者が負担し、物品・サービス提供の対価として実際に支払うべき価額に含まれていない金額(同条2項a号)
- 供給者が受領者に請求する手数料、梱包を含む付随的費用、ならびに物品・サービスの供給に関して供給者が物品・サービスの引渡し時または引渡し前に行った行為に対して請求する金額(同条2項c号)
GST法は経費精算額そのものが供給価額に含まれるとは明示的に規定はしてはいません。ただCGST法第15条を踏まえると、供給者が物品・サービスの提供の過程で負担し、最終的な負担は受領者に転嫁される性質の費用は供給価額に含められ、GSTの課税が必要と整理できます。これは上述の「2種類の経費精算」の①に該当する費用です。
ただし、例外規定があり、下記の3点を満たす場合でかつ純粋な代理人として供給者が負担した費用の場合は、供給価額を構成しません(CGST法細則第33条)。つまり、GSTを課税することなく供給者(純粋な代理人)は受領者に請求することができます。これは上述の「2種類の経費精算」の②に該当する費用です。
- 供給者は受領者の承認に基づき第三者への支払いを行う際に受領者の純粋な代理人として行動する場合 かつ
- 受領者に代わって純粋な代理人の行った支払いが純粋の代理人から受領者に発行される請求書に別途記載されている場合 かつ
- 純粋な代理人が純粋な代理人として第三者から調達した供給が自己の勘定で提供するサービスに追加される場合
CGST法細則第33条の規定する純粋な代理人とは?
次に純粋代理人(Pure Agent)とはどのような者を指すのか見ていきます。純粋代理人とは、供給を行う上で受領者に代わり付随的な支払を行い、それに対して払い戻しを請求する供給者を指します。供給者が求める払い戻しは実際に発生した費用のみであり、本来の物品・サービスの提供の価値に付随的な支払による価値が付加されることはありません。供給者と受領者の主な物品・サービスの提供に関する関係は契約主体同士の関係である一方、付随的な支払に関する供給者と受領者の関係は純粋な代理人の関係にあることになります。
なお、CGST法細則第33条の規定する純粋な代理人とは、下記の4点を満たす者を指します。
- 物品・サービス供給の過程で発生する費用等を負担する純粋な代理人として活動するため、受領者と契約を結ぶ者 かつ
- 受領者の純粋な代理人として調達、供給された物品・サービスあるいはその両方について所有権を保有することも保有する意図もない者 かつ
- 調達した物品またはサービスを自己の利益のために使用しない者。 かつ
- 自社の勘定で提供した商品またはサービスの対価のほかに、当該商品・サービスを調達するために発生した実費のみを受領する者
純粋な代理人の例は下記の通りです。
例:コンサルティング会社の法人Aは、その顧客である法人Bの法人設立に関する法律業務を請け負っているとします。法人Aは法人設立サービスの料金以外に、会社登記局に支払った登記料と商号承認料も法人Bから回収する必要があります。なお、会社登記局から請求される登録料および商号承認料は、法人Bに対して強制的に課される性質の費用です。法人Aが法人Bに行う設立サービス料の請求は、契約主体同士間のサービス提供に関する請求ですが、登記料や商号承認料の支払に関しては、法人Aは法人Bの純粋な代理人として行動し、会社登記局に支払っているに過ぎません。この場合は、前者の設立サービス料のみが法人Aから法人Bに行うサービス提供の供給価額としてGSTが課税され、後者の法人Aの登記料や商号承認料の請求(=経費精算)はGSTの課税をすることなく純額を請求可能となります。
よって、この例の法人Aのような費用を経費精算する場合にはGSTの課税は不要です。一方で単にお客様に物品またはサービスの提供を行う過程で自社で負担した旅費交通費、ホテル宿泊費、物品の梱包費等に関して、お客様にそれらを負担してもらう目的で経費精算する場合には、GSTを課税し請求することになります。なお、これらの費用はお客様に発行する請求書の請求額に含めた上でまとめて請求するができます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |