簡易課税制度(Composition levy Scheme)とは、小規模事業を営む納税者に対してGSTコンプライアンスの負荷を軽減するため設計された簡易的なGST課税制度です。州をまたいだ物品・サービスを提供する事業者ではない等の一定の要件を満たす小規模納税者にとっては、簡易課税制度を採用することで煩雑なGSTコンプライアンスへの対応コストをかけることなく事業を運営できます。
簡易課税制度の概要
簡易課税制度を適用する納税者は、通常のGST納税者に求められる在庫一覧や会計帳簿の作成・保管の義務が免除され(CGST法細則第56条2,4項)、さらに月次のGST納税及び月次申告等の一部の煩雑なコンプライアンスも免除される利点があります(同細則第61条1項)。
通常のGST計算では日本の消費税と同様の仕入税額控除の制度があるため、仮受GSTから仮払GSTを差し引いた金額をGST当局に納税していきます。一方で、簡易課税制度では仕入税額控除は適用されずかつ顧客から仮受GSTを徴収することもありません(CSGT法第10条4項)。その代わりに売上の一定額を自社負担で納税することになるため、簡易課税制度の基でのGST納税額の計算ロジックは、一般的なGSTでの計算ロジックと全く異なると言えます。
適用できる納税者
簡易課税制度を採用できる納税者は下記の通りです。
納税者 | 基準 | 根拠条文 |
①物品の供給者 |
前会計年度の総売上が1,500万ルピーを超えない者 |
CSGT法第10条1項 |
②物品の供給者(ウッタラーカンド州および北東部7州) |
前会計年度の総売上が750万ルピーを超えない者 |
2019年3月7日付のCBICの通達(No. 14/2019) |
③サービスの供給者(①の該当者を除く) |
前会計年度の総売上が500万ルピーを超えない者 |
CGST法第10条2A項 |
なお下記の者は上記の基準を満たしている場合であっても簡易課税制度を採用できないため注意が必要です(CGST法第10条2項、CGST法細則第5条)。
- インド非居住者
- 州をまたいで物品・サービスを提供する者(inter-state supply)
- Eコマースでの物品提供者
- アルコール等のGST法下では非課税の物品提供者
- アイスクリーム、パンマサラ、タバコの製造業者
- その者が事業所を有しない州において物品・サービスの供給を引き受ける者(Casual Taxable Person)
- 1つのPANで複数のGST番号を有しており、そのうち一部のGST番号では簡易課税制度を採用しない者 等
簡易課税制度での税率
簡易課税制度では顧客への請求時にGSTを課税することはなく(CSGT法第10条4項)、その代わりに下記の表の税額を自社負担でGST当局へ四半期ごとに納税することになります(CGST法細則第7条)。
事業の種類 | CGST | SGST | 合計 |
一定の製造業者 | 売上*0.5% | 売上*0.5% | 売上*1.0% |
アルコールを提供しない飲食業 | 売上*2.5% | 売上*2.5% | 売上*5.0% |
その他の物品提供者 | 課税売上*0.5% | 課税売上*0.5% | 課税売上*1.0% |
上記以外のサービス業 | 売上*3.0% | 売上*3.0% | 売上*6.0% |
その他の規定
まず、簡易課税制度を適用した納税者は適格請求書(Tax Invoice)の代わりに、Bill of suplyを発行する必要があります(CGST法第31条3項c号)。また、Bill of suplyには「Composition Taxable Person not eligible to collect tax on supplies」と記載することが求められます(CGST法細則第5条1項f号)。
次に、通常のGST納税者には月次のGST納税及び月次申告が求められる代わりに、簡易課税制度を適用した納税者には、四半期ごとの納税及びGST CMP-08というフォームで四半期申告が求められます。四半期の納税及び申告の期日は各四半期翌月の18日です(CGST法細則第62条1項i号)。なお、GSTR-4というフォームでの年次申告も求められています(同条1項ii号)。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |