GST税務当局の上訴手続き
GSTの税務訴訟では以下の通りの段階的な不服申し立て及び税務訴訟手続きをとっており、納税者が望めば最高裁判所まで上訴することが可能です。一方でGSTコミッショナーにも上訴する権利はあり、このGST税務当局の上訴はReview Application/Appealと呼ばれます。
名称 | 参照条文 | |
税務調査 | Adjudicating Authority | CGST法第73,74条 |
コミッショナーアピール | Appellate Authority | 同法第107条 |
不服申立 | Appellate Tribunal | 同法第112条 |
取消訴訟 | 高等裁判所(High Court) | 同法第117条 |
取消訴訟 | 最高裁判所(Supreme Court) | 同法第118条 |
GST税務当局のコミッショナーは、税務調査でのAdjudicating Authorityの更正処分通知の内容や記録を合法性や妥当性の観点から精査することができ、必要に応じて、自らの部下に当たるGST税務当局の担当官に対して第Appellate Authorityに訴えを提訴するよう指示することができます(CGST法第107条2項)。このコミッショナーからの提訴は更正処分通知の発行から6か月以内に行われる必要があります。Appellate Authorityはこの訴えを任命されたGST税務当局の担当官からの更正処分通知に対する訴えとして訴訟手続きを進めることになります(同法第107条3項)。
同様に、GST税務当局のコミッショナーはAppellate Authorityの判決に対しても、Appellate Tribunalに不服申立することができます(同法第112条3項)。この不服申立はAppellate Authorityの判決から6か月以内に行われる必要があります。
更正処分通知や判決の修正を行う修正当局(Revisional Authority)
さらに、CGST法第108条は修正当局(Revisional Authority)と呼ばれる機関に、GST法に基づきGST税務当局の担当官が発行した更正処分通知や下した決定を修正できる権利を与えています。
まず、修正当局は自らの判断やコミッショナーからの提言により、更正処分通知の内容や訴訟記録を精査することができます。修正当局はGST税務当局の歳入の利益を害する限りにおいて、自らの部下に当たるGST税務当局の担当官が発行した更正処分通知や決定が誤りでありかつ違法、不適切である、又は特定の重要な事実を考慮していないと考える場合には、必要に応じて適当と考える期間、当該更正処分通知や決定の効果を停止させることができます。そして 納税者等に聴聞の機会を与えた後、必要であればさらなる調査を行い、修正当局の正当かつ適切と考える決定を下すことができます。この修正当局の決定が最終の税務当局の決定となりますが、納税者は上記の表の通りより上位の訴訟手続きに進むことができます。
ただ、以下の場合には修正当局であっても更正処分通知や決定を修正することはできません(同法第108条2項)。
- 該当する更正処分通知や決定がより上位の訴訟手続きに上訴されている場合
- 該当する更正処分通知が発行されてから6か月が経過していない場合や、更正処分通知や決定が出されてから3年が経過している場合
- 該当する更正処分通知や決定がすでに下位の訴訟手続きで修正当局によって修正されている場合
- 修正当局からの2回以上の修正の場合
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |