税務調査(Assessment)とGST監査(Audit)の違い
GSTの税務調査やGST監査は州ごと会計年度ごとに執り行われますが、以下の通り役割が異なります。一部の税務調査の後にGST監査も併せて行われることがあります。
- 税務調査(Assessment):GST法に基づいて納税者の税額を計算する手続き(CGST法第2条11項)
- GST監査(Audit):申告された売上高、納付税金、還付金、および仕入税額控除の確からしさを確認しGST法のコンプライアンス遵守状況を評価するために、納税者の会計データや申告書を調査する(同法第2条13項)
Assessmentには下記のように様々な種類がありますが、①は納税者自らが行う税務申告のため、GST税務当局が行う税務調査(Assessment)は②~⑥となります。
No | 名称 | 参照条文 |
① | Self Assessment | CGST法第59条 |
② | Provisional Assessment | 同法第60条 |
③ | Scrutiny Assessment | 同法第61条 |
④ | Assessment of non-filers of returns | 同法第62条 |
⑤ | Assessment of unregistered persons | 同法第63条 |
⑥ | Summary assessment | 同法第64条 |
①Self Assessment
Self Assessmentとは納税者自らがGST法に基づいて自身の税額を計算し、自己申告する手続きです。税額を計算後はCGST法第第39条が定める各課税期間のGST申告書を提出しますが、この申告書の内容を基にGST税務当局は③以降の税務調査を行います。
②Provisional Assessment
Provisional Assessmentとは納税者自らが物品・サービスの価格やそれらに適用されるGST税率が決定できない場合に、納税者の要請に基づいてGST税務当局が行う税額の計算手続きです。
納税者は暫定的に税金を納付する旨及ぶその理由を書面でGST税務当局に提出し、GST税務当局はその要請を受理した日から 90 日以内に指定する税率又は価格で暫定的に税金を納付する旨の通知を納税者に対して発行します。その後GST税務当局は税額査定を確定するために必要な情報を考慮した上で、その通知の発行日から6か月以内に納税者に対して最終税額の通知を発行します。
③Scrutiny Assessment
Scrutiny Assessmentとは納税者が①のSelf Assessmentで申告した申告書の正確性をGST税務当局が精査する手続きです。
これはGST税務当局の自発的な手続きであり、司法行為ではないため、Scrutiny Assessmentの結果として更正通知が発行されることはありません。ただScrutiny Assessmentを通して申告書に何らかの不一致等が発見された場合は、GST税務当局の担当官は納税者に説明を求め説明が不十分であった場合にはGST監査等のプロセスが開始されることになります。詳細はこちらの記事もご参照ください。
④Assessment of non-filers of returns
Assessment of non-filers of returnsとは納税者が①のSelf Assessmentで申告書を申告しなかった場合に、GST税務当局が入手可能な又は収集したすべての関連資料を考慮した上で、納税額を確定させる手続きです。またこの税務調査はBest judgment assessmentsと呼ばれることもあります。
納税者が①のSelf Assessmentで申告書を申告しなかった場合には、GSTR-3Aという様式で通知が発行され15日以内に申告書を提出するよう求められます(CGST法第46条、CGST法細則第68条)。その通知発行後にも納税者が申告書を申告しない場合にはこのAssessment of non-filers of returnsが開始され、確定税額の通知が発行される流れとなります。この確定税額の通知を受領した納税者が当該税額を延滞利息と遅延金を併せて納税した後は、この通知は取り消されたものとみなされます。なお、該当年度の年次申告の期日から5年以内であれば、GST税務当局はこの確定税額の通知を行うことができます。
⑤Assessment of unregistered persons
Assessment of unregistered personsとはGST登録が必要であるにもかかわらず、GST登録を行わなかった納税者に対して、GST税務当局が納税義務額を査定する手続きです。またこの税務調査もBest judgment assessmentsと呼ばれることもあります。
GST税務当局は納税額を査定し、GST納税者に説明の機会が与えられた後に、確定税額の通知が納税者に発行されます。なお、該当年度の年次申告の期日から5年以内であれば、GST税務当局はこの確定税額の通知を行うことができます。
⑥Summary assessment
Summary assessmentとは納税者の納税義務を示す証拠に基づき、当税務調査の執行の遅れがGST税務当局の歳入の悪影響を及ぼすと信じる十分な根拠がある場合に、GST税務当局の歳入の利益を保護するために行われる手続きです。GST税務当局は納税額を査定し、確定税額の通知が納税者に発行されます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |