GSTR-3BのRは”Return”を指し、”Return”とは納税申告書を意味し、税務申告はFiling of Returnsと呼ばれますが税務申告はGSTのコンプライアンスの根幹をなし、最も重要なコンプライアンス手続きと言えます。GSTは申告納税方式(Self-Assessment)の税金であり、GST登録者の行った各税務申告の内容に基づいて、GST当局はGST登録者の経済活動や納税額を把握できるようになるためです。逆に言えば、適切に税務申告が行われていない場合は、税務調査の対象になり結果として更正処分を受けてしまうことになりかねません。
GSTR-3Bとは
様式GSTR-3BとはGSTの簡易概要申告書であり、GST納税者が特定の課税期間における 売上供給や仕入の概要を申告する際に使用する税務申告書です(CGST法第39条、CGST法細則第61条)。GSTR-3Bでは、売上供給、仕入れ、利用する仕入税額控除(Input Tax Credit- ITC)、GST納税必要額及びGST納税額等を記載します。ただ、請求書ごと粒度でのの売上供給はGSTR-1で申告が完了しているため、GSTR-3Bで申告する売上供給は請求書ごとの粒度である必要はありません。
また、GSTR-3Bの申告前までに当該対象期間のGST納税額を政府に納税する必要があります(CGST法第39条7項)。GSTR-3Bの申告までの流れはこちらをご確認ください。
なお、下記のGST登録者はGSTR-3Bの申告は求められていません。
- Input Service Distributor(CGST法第2条61項参照)
- 非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)(CGST法第2条77項参照)
- 簡易課税制度(Composition levy Scheme)を採用する者(CGST法第10条参照)
- TDS徴収義務者(CGST法第51項参照)
- TCS徴収義務者(CGST法第52 項参照)
- インド国外のオンライン情報データアクセス・読み込み(Online Information Data Base Access and Retrieval - OIDAR)サービス提供者(IGST法第14条参照)
GSTR-3Bの申告期日
QRMPスキームを適用している納税者を除き、GSTR-3Bの申告期日は翌月の20日です(GST法細則第61条)。また、GST登録者は該当月の物品・サービス供給、リバースチャージ方式での納税が求められる仕入れ、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の申告等のいずれが無く、申告書に記入内容が全く無い場合であっても、Nil申告としてGSTR-3Bの申告が求められます。ただ、Nil申告ではモバイル端末でOTP(One Time Password)認証する簡便的な方法での申告が可能となっています(CGST法細則第67A条)。
加えて前月までのGSTR-3Bや当該月のGSTR-1 が申告されていない場合には、それらの申告が完了するまでは当該月のGSTR-3Bの申告はできません(CGST法第39条10項)。
GSTR-3Bでの申告内容
GSTR-3Bでは、GSTR-1やGSTR-2Bの内容が自動的に転記される仕組みになっております。そのため基本的には追加でGSTR-3Bの申告時に記入する内容はありません。しかし、GSTR-2Bに記載されている仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の内、まだ請求書を受領していない等でCGST法16条の規定する仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用条件を満たさない場合には、自動転記されたGST-3Bの内容を修正する必要があります。
GSTR-3B申告の遅延に関する延滞利息及び遅延金
GSTR-3Bの申告の申告に際して当該対象期間のGST納税額を政府に納税する必要がありますが、この納税が遅延した際には延滞利息(Interest)が固定率18%/年(1.5%/月)で計算されます(CGST法第50条1項)。なお、2024年7月10日付の通知Notification No. 12/2024–Central TaxにてCGST法細則第88B条1項に但し書きが加筆され、GSTR-3Bの申告期日(翌月20日)以前に電子現金出納帳(Electronic Cash ledger)に納税額が反映されているものの、同金額のGSTR-3Bへの反映が翌月21日以降であった納税額に対しては延滞利息(Interest)は発生しないことを明らかにしました。つまり、ネットバンキング等を介した納税自体は申告期日前に完了しているものの、GSTR-3B自体の申告のみが遅延した場合には延滞利息は発生しないことになります。
またGSTR-3B自体の申告が遅延する場合には以下の遅延金(Late Fee)が日単位で課されます(CGST法第47条、 No. 76/2018 & No.19/2021– Central Tax)。
Nil申告以外の場合(2021年6月以降)
遅延金/日 |
最大遅延金額 (過年度の年間売上:~1,500万ルピー) |
最大遅延金額 (過年度の年間売上:1,500万~5000万ルピー) |
最大遅延金額 (過年度の年間売上:5,000万ルピー~) |
|
CGST法 | 25ルピー | 1,000ルピー | 2,500ルピー | 5,000ルピー |
各州SGST法 | 25ルピー | 1,000ルピー | 2,500ルピー | 5,000ルピー |
合計 | 50ルピー | 2,000ルピー | 5,000ルピー | 10,000ルピー |
Nil申告の場合(2021年6月以降)
遅延金/日 | 最大遅延金額 | |
CGST法 | 10ルピー | 250ルピー |
各州SGST法 | 10ルピー | 250ルピー |
合計 | 20ルピー | 500ルピー |
申告内容の修正
GSTR-3Bの申告後は申告内容の修正はできないため、翌月以降のGSTR-3B申告で修正を行う必要があります。前月までに申告したGSTR-3Bの申告内容を修正したい場合は、翌月以降のGSTR-3B申告で修正することになります。修正期間は翌年度の11月末又は年次申告の申告日のいずれか早い日までです(CGST法第39条9項)。
ただ、税務調査、GST監査、査察等で発覚した事項に関しては、GSTR-3Bの修正が認められていません。よって、税務調査、GST監査、査察等で発覚した事項に関して、供給者が追加納税したGSTに係る仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)は受領者側で否認される可能性があります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |