GSTR-2Aとは
GSTR-2Aとは、GST登録者に対して自動的に生成される仕入れ(Inward Supply)に関する税務申告書です。供給者がGSTR-1を介して売上申告をすると、その情報は受領者のGSTポータル上のGSTR-2Aに自動的に取り込まれる仕組みになっています(CGST法第38条、CGST法細則第60条1項)。GSTR-2Aは自動生成される様式のため、GST納税者がGSTR-2Aを申告することや修正することはできず閲覧用の様式となっています。
GSTR-2Bとは
GSTR-2Bとは、2020年8月より運用が開始された様式です。供給者のGSTR-1申告後にGST登録者に対して自動的に生成される仕入れに関する税務申告書である点はGSTR-2Aと同様ですが、GSTR-2BはGST納税者が利用できる仕入税額控除額を確認するために使用されます(CGST法細則第60条7項)。なおGSTR-2Bは自動生成される様式のため、GST納税者がGSTR-2Bを直接申告することや修正することはできません。
GST納税者はGSTR-2Bを介して、自身の会計帳簿と利用可能な仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を照合します。照合した結果、GSTR-2Bの示す仕入税額控除可能額と会計帳簿上の記録に差異がある場合は注意が必要です。なぜなら、GSTR-2Bに記載されていない請求書の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)は、たとえGST納税者が供給者に仮払GST(Input GST)として支払っていても仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用することが出来ないためです(CGST法第16条2項aa号、CGST法細則第36条4項)。よって、受領者は供給者が適切にGSTR-1で該当する仕入れの請求書を申告していないことを自らのGSTR-2Bで確認した場合は、供給者に対してGSTR-1で適切に売上申告をするよう忠告する必要があります。日本の消費税法に比べ、インドのGST法は仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用要件が厳しいという特徴があります。
またGSTR-2Aは、供給者が売上申告を更新するたびにリアルタイムで内容が更新されていきます。GSTR-2Bは対象期間の翌月の14日にドラフト版が生成され、その後は下記の請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)を介して、受領者はGSTR-3Bの申告前までに最終版のGSTR-2Bを再計算し確定させます。
請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)
2024年10月1日からGSTポータルには、請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)が実装されています。請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)を介して、受領者が仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用する前の段階で、受領者に供給者の発行する請求書の確からしさを検証させることで、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)に関する不一致を排除したい狙いがあります。このシステムを通して請求書の修正に関して供給者と受領者間のコミュニケーションを手助けをますが、今まで以上に受領者側のコンプライアンス負荷が増大してしまう懸念もあります。
供給者が請求書をGSTR-1 / GSTR-1A、IFFで申告するとその内容が受領者のGSTポータルの請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)に反映されます。受領者は請求書の内容を確認の上、GSTR-3Bの申告期日(翌月20日)前までに、承認(Accept) / 拒否(Reject)/ 保留(Pending)のいずれかを選択します。なお、いずれも選択されない場合にはみなし承認(Deemed accepted)となります。承認(Accept)した請求書は受領者のGSTR-2Bに仕入税額控除可(ITC Available)として反映され、拒否(Reject)した請求書は受領者のGSTR-2Bに仕入税額控除不可(ITC Rejected)として反映されます。保留(Pending)した請求書は、その月には受領者のGSTR-2Bには反映されず翌月の請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)に繰り越されるため、CGST法第16条4項の期日(翌年の11月30日又はGST年次申告のいずれか早い日)までに承認(Accept) / 拒否(Reject)を選択することになります。
受領者のGSTR-2Bは翌月の14日にドラフト版が生成されますが、受領者がそれ以降に承認(Accept) / 拒否(Reject)/ 保留(Pending)を選択した場合には、受領者はGSTR-3Bの申告前までに最終版のGSTR-2Bを再計算し確定させる必要があり、確定版のGSTR-2Bの仕入税額控除可(ITC Available)の数値がGSTR-3Bに反映されます。供給者も受領者の請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)でのアクションを確認可能な制度設計になっています。
この請求書管理システム(Invoice Management System - IMS)導入後は前月のGSTR-3Bが申告されない限り、翌月のGSTR-2Bは生成されなくなります。一方でGSTR-2Aの運用に変更はありません。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |