各申告書の記載内容や申告内容に整合が取れていない場合、税務通知が発行されます。GSTR-1、GSTR-2A/2B、GSTR-3Bの概要は下記の通りです。
- GSTR-1:供給者が売上供給の詳細を申告する税務申告書
- GSTR-2A/2B:受領者が確認できる仕入の明細
- GSTR-3B:供給者が売上供給や仕入の概要を申告する税務申告書
GSTR-1とGSTR-3Bの不一致とは?
GST納税者がGSTR-3Bにて申告した売上供給の額がGSTR-1で申告した売上供給より一定額又は一定割合以上下回る場合には、GST納税者に様式GST DRC-01Bという税務通知が発行されます(CGST法細則第88C条)。DRC-01Bを受領したGST登録者は7日以内に下記のいずれかを行う必要があり、いずれも行わない場合や理由説明が受け入れられない場合は、CGST法第79条が規定する資産の差し押さえ等の強硬的な手段が取られます。
- 差額分を延滞利息とともに納税する
- 差額が生じている理由をGSTポータルを介して説明する
さらに、DRC-01Bを受領したにもかかわらず上記のいずれも行わないGST登録者は翌月のGSTR-1申告を行うことができません(CGST法細則第59条6項d号)。
GSTR-3BとGSTR-2A/2Bの不一致とは?
GST納税者はGSTR-2A/2Bで利用可能な仕入税額控除(Input Tax Credit- ITC)の額を確認した上で、GSTR-3Bにて特定の課税期間における GSTの概要を申告します。
2022年1月以降、インドのGST制度では、GSTR-2Bに記載されていない仕入税額控除(Input Tax Credit- ITC)は、たとえ受領者(仕入れ企業)が供給者(売手企業)に物品・サービス供給対価の支払い時にGSTを仮払GSTとして支払っていた場合であっても、仕入税額控除(Input Tax Credit- ITC)を利用することはできません(CGST法第16条2項aa号、CGST法細則第36条4項)。
しかし、GST納税者がGSTR-3Bにて申告した仕入税額控除額(Input Tax Credit- ITC)が、GSTR-2Bが示す利用可能な仕入税額控除額(Input Tax Credit- ITC)より一定額又は一定割合以上の場合には、GST納税者に様式GST DRC-01Cという税務通知が発行されます(CGST法細則第88D条)。DRC-01Cを受領したGST登録者は7日以内に下記のいずれかを行う必要があり、いずれも行わない場合や理由説明が受け入れられない場合は、情報開示を求める通知(Show Cause Notice)が発行されます。
- 超過して利用した仕入税額控除額(Input Tax Credit- ITC)を延滞利息とともに納税する
- 利用した仕入税額控除額(Input Tax Credit- ITC)が超過している理由をGSTポータルを介して説明する
さらに、DRC-01Cを受領したにもかかわらず上記のいずれも行わないGST登録者は翌月のGSTR-1申告を行うことができません(CGST法細則第59条6項e号)。
税務調査通知の自動化と対応方法
近年、GSTの税務調査は自動化が進められております。2023年5月から間接税・関税中央委員会(Central Board of Indirect Taxes and Customs - CBIC)は自動申告精査モデル(Automated Return Scrutiny Module)の導入を開始しました。自動申告精査モデルはACES-GSTバックエンドアプリケーションに統合され、データ分析を活用してGST申告書の矛盾やリスクを特定し、納税者にコンプライアンス違反があった場合に担当官に自動的にアラートを送信されます。なお、ACES-GSTバックエンドアプリケーションとは、CBICの電子政府構想の一環としてインドの間接税行政における納税者サービス、透明性、説明責任、効率性の向上を目的としたソフトウェア・アプリケーションです。
そのため、上記のような申告書間の不一致があると自動申告精査モデルによって検知され、税務通知が発行されることになります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |