四半期申告・月次納税(Quarterly Return Filing and Monthly Payment of Taxes - QRMP)スキームとは2021年1月1日から運用が開始された、総売上額が5千万ルピー以下の小規模事業を営むGST納税者のために月次申告の負荷を軽減する目的で用意された制度です(Circular No. 143/13/2020- GST)。QRMPスキームを採用するGST納税者は、政府へのGST納税は毎月行う必要がある点においては一般的な納税者と同じですが、GSTR-1やGSTR-3Bの月次申告の負荷は四半期に一度に軽減されます。
QRMPスキームを採用できるGST納税者
前年度及び当該年度の年間総売上が5千万ルピー未満のGST納税者はQRMPスキームを採用することができます。ただ、QRMPスキームを採用しているGST納税者であっても、当該年度のいずれかの四半期に売上高が5千万ルピーを超えた場合には次の四半期からこのスキームの対象外となります。
QRMPスキームを採用するGST納税者は、前四半期の第 2 月の 1 日から、オプションが行使される四半期の第 1 月の末日までにGSTポータルでその意図を表明する必要があります(CGST法細則第61A条)。例えば、2023年4月~6月の四半期からQRMPスキームを採用するためには、2023年2月1日~2023年4年30日までにその旨の表明が求められることになります。なお一度、QRMPスキームを採用すると将来にわたってQRMPスキームを採用することになるため、毎四半期ごとにQRMPスキームの採用する意図をGSTポータルで表明する必要はありません。
また、QRMPスキームを採用はGST番号(GST Identification Number - GSTIN)ごとの選択になるため、2州以上でGST登録をしているGST登録者はある州ではQRMPスキームを採用するものの、他の州ではQRMPスキームを採用しないという選択も可能です。
QRMPスキームでのGSTR-1申告
通常のGST納税者は月次でGSTR-1にて売上申告を行いますが、QRMPスキームの採用者がGSTR-1の申告を行うのは四半期の最終月のみであり、年に4回のみGSTR-1の申告を行うことになります。QRMPスキームの採用者のGSTR-1申告期日は、四半期の最終月の翌月13日です。(CGST第37条1項 但し書きの1、Notification No. 83/2020–Central Tax)
一方で、QRMPスキーム採用者は任意で四半期の最初の2ヶ月間に売上申告するための制度である請求書発行機能(Invoice Furnishing Facility - IFF)を利用することも可能です。IFFでは各月500万ルピーまでBtoBの請求書、Debit Note、Credit Noteを該当年度の翌月13日までに申告することが出来ます(CGST法細則第59条2項)。なお、IFFを利用して申告した四半期の最初の2ヶ月間の売上請求書は、最終月に行うGSTR-1の申告に含める必要はありません(CGST法細則第59条3項)。
IFFを利用しない場合にはQRMPスキーム採用者は四半期に一度しかGSTR-1の申告を行わないため、QRMPスキーム採用者から物品・サービスの提供を受ける取引先(買い手)のGSTR-2Bは四半期ごとに更新され、取引先(買い手)は仕入税額控除を四半期ごとにしか使用できなくなります。しかし、IFFを利用した場合には、取引先(買い手)のGSTR-2Bにも月次単位で利用可能な仕入税額控除が反映されるメリットがあります。
QRMPスキームでのGST納付
QRMPスキームを採用している場合であっても、政府へのGST納税は毎月行う必要があります。ただ、四半期の第1月と第2月は翌月25日までに、様式PMT-06を使って税金を納付します。納税者は、35%納付方式と呼ばれる固定申告方式(Fixed Sum Method - FSM)、または一般方式(Self-Assessment Method - SAM)のいずれかで四半期の第1月と第2月は納税を進めることができます(CGST法細則第61条3項)。
QRMPスキームでのGSTR-3B申告
通常のGST納税者は月次でGSTR-3Bにて申告を行いますが、QRMPスキームの採用者がGSTR-3Bの申告を行うのは四半期の最終月のみであり、年に4回のみGSTR-3Bの申告を行うことになります。申告期日は下記の通りです(CGST法細則第61条1項)。
主たる事業所の所在地 | GSTR-3Bの申告期日 |
チャッティースガル州、マディヤ・プラデシュ州、グジャラート州、マハラシュトラ州、カルナータカ州、ゴア州、ケララ州、タミル・ナードゥ州、テランガーナ州、アンドラ・プラデシュ州、ダマン・ディウ州、ダドラ・ナガルハヴェリ州、プドゥチェリー州、アンダマン・ニコバル諸島、ラクシャドウィープ諸島。 | 四半期の翌月22日 |
ヒマーチャル・プラデーシュ州、パンジャブ州、ウッタラーカンド州、ハリヤナ州、ラジャスタン州、ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、シッキム州、アルナーチャル・プラデーシュ州、ナガランド州、マニプール州、ミゾラム州、トリプラ州、メーガーラヤ州、アッサム州、西ベンガル州、ジャールカンド州またはオディシャ州。 及び以下の連邦直轄領。ジャンムー・カシミール州、ラダック州、チャンディーガル州、デリー州。 |
四半期の翌月24日 |
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |