インド所得税当局の行う税務調査で納税者の会計帳簿等を調査後に当局が納税者に所得税の未払い額等があると判断した場合には、更正処分通知(Order of Assessment)が発行されます。近年、非対面型(Faceless Assessment)の税務調査も導入され税務調査の迅速化が図られていることに伴い、更正処分通知の発行期日も短縮されている傾向にありますが、インド所得税当局は何年分まで遡って更正処分通知を発行できるのでしょうか?
更正処分通知の発行期日の変遷
2023年11月時点では、下記の各税務調査を経て発行される更正処分通知(Order of Assessment)は確定申告が提出された会計年度の最終日より12か月以内までに発行される必要があると規定されています(所得税法第153条1項)。
税務調査 | 参照条文 |
通常の税務調査(Summary Assessment) | 所得税法第143条1項 |
精緻な税務調査(Scrutiny Assessment) | 同法第143条3項 |
ベストジャッジメント(Best Judgement) | 同法第144条 |
ただ、FY2016-17以前までは確定申告が提出された会計年度の最終日より21か月以内に発行されると規定されており、発行期日は下記の通り大きな傾向としては短縮されてきた変遷があります。この短縮は納税者の視点から考えると追加徴収されることによる経営の不確実性や税務調査の対応期間やコストの軽減に繋がるため望ましい傾向と言えます。
会計年度 | 更正処分通知の発行期日 |
FY2016-17以前 |
確定申告が提出される会計年度の最終日より21か月以内(2019年12月31日以前) |
FY2017-18 | 確定申告が提出される会計年度の最終日より18か月以内(2020年9月30日) |
FY2018-19 | 確定申告が提出される会計年度の最終日より12か月以内(2021年3月31日) |
FY2019-20 | 確定申告が提出される会計年度の最終日より18か月以内(2022年9月30日) |
FY2020-21 | 確定申告が提出される会計年度の最終日より9か月以内(2022年12月31日) |
FY2021-22以降 | 確定申告が提出される会計年度の最終日より12か月以内(2024年3月31日以降) |
なお、税務調査の過程で移転価格上の論点が把握され事案が移転価格調査官に付託された場合は、この期間がさらに12か月延長されます(インド所得税法第153条4項)。
さらに、同法139条8A項の規定する更新申告(Updated Return)にて、過少申告であった所得を更新申告した場合には、申告が提出される会計年度の最終日より12か月以内が更正処分通知の発行期日になります(同法第153条1A項)。
再調査(Re-Assessment)の場合の更正処分通知の発行期日
同法147条の規定する再調査(Re-Assessment)の場合の更正処分通知(Order of Assessment)は、上述の3つの税務調査とは異なり、再調査の開始通知が出された会計年度の最終日より12か月以内に発行されます。(同法第153条2項但し書き)。なお当該開始通知は該当確定申告が提出された会計年度の最終日よりか3年3か月以内に納税者に発行されますが、課税から逃れた所得が500万ルピーを超える場合には3年が5年3か月まで延長されます(同法第149条)。
例えば、FY2023-24に関する再調査で課税逃れの所得が500万ルピーを超えない場合、再調査の開始通知は2028年6月30日までは発行される可能性があり、更正処分通知は2030年3月31日までは発行することができる規定となっています。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |