インド所得税当局の実施するインド所得税法の税務調査の結果として、納税者に所得税の追加納税が必要であると税務調査官が判断した場合には、更正処分通知(Order of Assessment)が発行されます。近年、非対面型の税務調査も導入され税務調査の迅速化が図られていることに伴い、更正処分通知の発行期日も短縮されている傾向にありますが、インド所得税当局は何年分まで遡って更正処分通知を発行できるのでしょうか?
以下では、インド所得税法の規定を紹介したうえで、更正処分通知等を実際に所得税当局が発行できる日付を該当年度ごとに表にまとめます。
更正処分通知の発行期日
下記の各税務調査を経て発行される更正処分通知は、該当する課税年度の翌会計年度の最終日より12か月以内に発行されます(1961年インド所得税法第153条1項但し書き)(2025年インド所得税法第286条1項テーブルNo.1)。
- 精緻な税務調査(Scrutiny Assessment)
- ベストジャッジメント(Best Judgement)
ただ、FY2016-17以前までは所得税申告書が提出された会計年度の最終日より21か月以内に発行されると規定されており、発行期日は下記の通り大きな傾向としては短縮されてきた変遷があります。この期間の短縮は、納税者に求められる税務調査の対応期間やコストの軽減に繋がります。
| 会計年度 | 更正処分通知の発行期日 |
| FY2016-17以前 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より21か月以内(2019年12月31日以前) |
| FY2017-18 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より18か月以内(2020年9月30日) |
| FY2018-19 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より12か月以内(2021年3月31日) |
| FY2019-20 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より18か月以内(2022年9月30日) |
| FY2020-21 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より9か月以内(2022年12月31日) |
| FY2021-22以降 | 所得税申告書が提出された会計年度の最終日より12か月以内(2024年3月31日以降) |
なお、税務調査の過程で移転価格上の論点が把握され事案が移転価格調査官に付託された場合はこの期間がさらに12か月延長されます(1961年インド所得税法第153条4項)(2025年インド所得税法第286条2項)。
さらに、納税者が更新申告書(Updated Return)を申告していた場合には、更新申告書(Updated Return)が提出された会計年度を基準として、この期間が設定されます(インド所得税法第153条1A項)(2025年インド所得税法第286条1項テーブルNo.2)。
再調査の場合の更正処分通知の発行期日
再調査(Re-Assessment)の場合の更正処分通知は、上述の税務調査とは異なり、再調査の調査通知(Notice)が出された会計年度の最終日より12か月以内に発行されます。(1961年インド所得税法第153条2項但し書き)(2025年インド所得税法第286条1項テーブルNo.4)。なお、2024年9月以降、調査通知は該当する課税年度の最終日より4年3か月以内に納税者に発行されますが、課税から逃れた所得が500万ルピーを超える場合にはこの期間が6年3か月まで延長されます(1961年インド所得税法第149条1項)(2025年インド所得税法第282条1項)。
さらに、税務調査の過程で移転価格上の論点が把握され事案が移転価格調査官に付託された場合は、この更正処分通知の発行期間がさらに12か月延長されます(1961年インド所得税法第153条4項)(2025年インド所得税法第286条2項)。
例えば、FY2024-25に関する再調査(移転価格税制は関連しない)で課税逃れの所得が500万ルピーを超えない場合、再調査の調査通知は2029年6月30日までは発行される可能性があり、更正処分通知は2031年3月31日までは発行することができる規定となっています。
税務通知の実際の発行期日
各会計年度ごとに各種税務通知の発行期日をまとめた一覧表は下記の通りです。
<税務調査の開始通知の発行期日>
| 該当年度 | 略式の税務調査のIntimation*1 | 精緻な税務調査のNotice*2 | 再調査のNotice*3 |
| FY2022-23 | 2024年12月31日 | 2024年6月30日 |
2027年6月30日 2029年6月30日*4 |
| FY2023-24 | 2025年12月31日 | 2025年6月30日 |
2028年6月30日 2030年6月30日 |
| FY2024-25 | 2026年12月31日 | 2026年6月30日 |
2029年6月30日 2031年6月30日 |
| FY2025-26 | 2027年12月31日 | 2027年6月30日 |
2030年6月30日 2032年6月30日 |
*1 : 略式の税務調査(Summary Assessment) / *2 : 精緻な税務調査(Scrutiny Assessment) / *3 : 再調査(Re-Assessment)
*4: 課税回避が疑われる所得が5百万ルピー以上の場合
<更正処分通知等の発行期日>
| 該当年度 | 略式の税務調査のIntimation*1 | 精緻な税務調査のOrder*2 | 再調査のOrder*3 |
| FY2022-23 | NA*4 |
2025年3月31日 2026年3月31日*5 |
2029年3月31日 2031年3月31日*6 |
| FY2023-24 | NA |
2026年3月31日 2027年3月31日 |
2030年3月31日 2032年3月31日 |
| FY2024-25 | NA |
2027年3月31日 2028年3月31日 |
2031年3月31日 2033年3月31日 |
| FY2025-26 | NA |
2028年3月31日 2029年3月31日 |
2032年3月31日 2034年3月31日 |
*1 : 略式の税務調査(Summary Assessment) / *2 : 精緻な税務調査(Scrutiny Assessment) / *3 : 再調査(Re-Assessment)
*4 : 納税通告(Intimation)自体が、追徴課税通知(Notice of Demand)とみなされるため、Intimationが発行されてから30日以内に納税者が適切に回答を行わない場合には納税額の調整等が行われる
*5: 税務調査の過程で移転価格上の論点が把握され事案が移転価格調査官に付託された場合
*6: 課税回避が疑われる所得が5百万ルピー以上の場合
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


