インド内国法人が日本親会社等の日本の法人にコンサルティングサービスや技術サポートサービス等(Fee for Technical Service - FTS)を提供する場合、日本の法人は日印租税条約第12条の適用(債務者主義)により日本国内源泉所得として、10%の日本源泉徴収税の源泉徴収が必要となります(日本所得税法第161条1項6号、162条、212条、213条)。この源泉徴収額はインド内国法人がインド所得税法に基づいてインド側で所得税申告を行う際に、外国税額控除として利用することができます(インド所得税法細則第128条、日印租税条約第23条2項)。外国税額控除とは、日本で徴収された源泉徴収税をインドで納税すべき税額に充当することで、その分インドでの納税額を減額する税額の控除です。
ただ、日本での源泉徴収税額がインドで求められる納税額を上回る場合や、インド法人が赤字でありそもそもインドでの法人納税額が無い場合には、日本での源泉徴収税の全額を外国税額控除として利用できません。また日本と異なり、インドでは外国税額控除の翌年度への繰り越しは認められていないため、相殺しきれなかった外国税額控除は費用計上することになり、インド法人の実効税率を押し上げる要因となります。そこで検討できるのが「還付申請を介した実効税率軽減スキーム」です。
日本での所得税申告時に還付申請
外国税額控除の利用だけでは日本での源泉徴収税を全額相殺しきれない場合には、日本側で源泉徴収税額を還付申請する方法を検討します。ただ、納付済みの源泉徴収税額を直接還付申請することはできないため(国税庁通達No.2889 租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求)、日本での所得税申告を通して還付申請を行う必要があります。所得税申告では、源泉徴収税の対象となったインド法人の事業活動に関する部門別財務諸表を円建てで作成した上で課税所得を求め、日本法人税額を求める流れになります。そして、「①納付済み源泉徴収の税額」から「②事業活動から発生した利益に対する日本法人税額」を差し引いた差額分が還付対象額となります。よって、①より②の金額の方が高い場合には還付額は発生しません。なお、同一の源泉徴収税に対しては外国税額控除の利用と還付申請という二つのベネフィットを同時に享受することはできません。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |