インド子会社の本社はハリヤーナ州に所在しており主に管理部門を請け負っている一方で、製造拠点や販売拠点としてカルナータカ州に支社を持っているようなケースのように、複数州に拠点を構えており各州でGST登録をしている企業は多くあります。このような企業の場合、カルナータカ州の製造拠点や販売拠点である支社は収益センターとして機能し、ハリヤーナ州の管理機能のみを有する本社はコストセンターとなるため、弁護士事務所、会計事務所、監査法人等からの専門家費用や人材紹介会社からの人材紹介費用等に関する請求書は本社宛に発行されることが想定されます。本社宛にこれらの請求書が発行される以上、これらの請求書に関する仮払GST(Input GST)は本社が所在するハリヤーナ州のGST番号に紐づけられる一方で、コストセンターである本社のGST番号には相殺する仮受GST(Output GST)が紐づいておらず、このままでは全社として仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を適切に使用できなくなってしまいます。
複数州でGST登録をしている場合には、各州ごとに仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用やGSTの納税額計算を行ったうえでGST申告を進めていく必要がありますが、ある州で支払った仮払いGSTを他州で仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)として使用することはできるのでしょうか?
州間の仮払GSTの付替え
上記の例を用いると、ハリヤーナ州の本社で第三者から受けたサービスはカルナータカ州での事業活動のために支払われたサービスのため、ハリヤーナ州の本社からカルナータカ州の支社に対して自社内取引として請求書を発行することができます。この自社内の請求書にもGSTはかかるため、カルナータカ州の支社によるこの請求書の支払いを通して、カルナータカ州のGST番号に仮払GSTが紐づけることが可能になります。この自社内の仮払GST(Input GST)の付替えはGST制度ではクロスチャージ(Cross-Charge)と呼ばれます。
なお、CGST法細則第28条はこの自社内の請求書での請求額として公開市場価格(Open Market)にて取引価格を決定するよう求めていますが、サービス受領側(本事例ではカルナータカ州の支社)で全額の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を使用できる場合は、請求書に記載した金額が公開市場価格とみなされるという但し書きもあります。よって、サービス受領側で全額の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を使用できる場合は、取引価格は自由に設定可能であり、1ルピーの請求書を発行することも可能です。
また、似て非なる概念としてインプットサービスディストリビューター(Input Service Distributor - ISD)という制度もGST法にはあります。Input Service Distributorの登録をすることで自社の他州支社に第三者からのサービスの仕入れに係る仮払GSTを配賦することが可能です(CGST法第20条)。
2023年7月17日付の通達(Circular No.199/11/2023-GST)では、第三者から提供を受けたサービス供給に関する仮払GST(Input GST)は、クロスチャージ(Cross-Charge)又はインプットサービスディストリビューター(Input Service Distributor)制度のいずれによっても他州の支社に配賦することができると明確化していました。ただ、2025年4月以降、他州等のGST登録に代わって又は代表して共通のサービス供給を受ける場合、インプットサービスディストリビューター(Input Service Distributor)の登録をした上で、当該仮払GST(Input GST)の配賦をすることが必須となりました。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |