GSTの納税額の管理は電子化が進んでおり、GST納税者はGSTポータルと呼ばれる共通ポータルから、その月のGST納税額や利用可能な累積仕入税額控除額等を簡単に確認が可能です。GST登録者がGST月次申告にて申告した仮払GST(Input GST)の累計額を確認するために参照する電子台帳が、「電子仮払GST台帳(Electronic Credit Ledger)」です。なお、複数州でGST登録をしている納税者のGST納税額は州ごとで管理されるため、GSTポータルのログイン情報も州ごとに付与され、電子仮払GST台帳も州ごとに作成されます。
日本の消費税と同様でGSTでも仕入税額控除の仕組みがあり、仮受GST(Output GST)と仮払GST(Input GST)の差額を月次単位で納税します。この電子仮払GST台帳はGSTポータルで閲覧可能な納税義務の電子登録一覧(Electronic Liability Register)と密接に連携することで、納税者の仕入税額控除の計算を自動化させています。つまり、「電子仮払GST台帳で表示された利用可能な仮払GST額」が「納税義務の電子登録台帳」に反映されることで、仕入税額控除の計算が自動的に行われる仕組みです(CGST法細則第86条2項)。
電子仮払GST台帳(Electronic Credit ledger)の詳細
電子仮払GST台帳はForm GST PMT-02という様式でGSTポータル上で確認ができます(CGST法第49条2項、CGST法細則第86条1項)。なお、電子仮払GST台帳の内容に不一致がある場合にはForm GST PMT-04にてGST当局まで通知する必要があります(CGST法細則第86条6項)。
納税者はGSTの月次申告(GSTR-3B)にて使用可能な仮払GSTを申告することで、GSTポータル上の電子仮払GST台帳上にて使用可能な仮払GSTをElectronic Creditに転換させます(CGST法第41条)。ただ、GST法では物品・サービスの供給者が仮受GST(物品・サービスの受領者からすると仮払GST)をGST当局に納税しない限りは受領者は当該仮払GSTを仕入税額控除として使用できません。仕入税額控除の使用制限の詳細はこちらをご参照ください。
使用できないが仮払GSTが電子仮払GST台帳にElectronic Creditとして反映されてしまっている場合には、利息とともに返戻(Reversal)し納税者自身で自らの電子仮払GST台帳から落とす必要があります(CGST法第41条2項)。
このElectronic Creditは仮受GSTと相殺(Set Off)することはできますが(CGST法第49条4項)、リバースチャージ方式の納税には充当できないので注意が必要です。つまり、仮払GSTが累積している企業であっても、リバースチャージ方式で納税が必要な取引を行った際には、GST当局に対してリバースチャージ額の納税が必要になります。なお、この納税済みのリバースチャージ額は仮払GSTとしてGSTR-3Bで月次申告し、Electronic Creditに転換します。
また、GSTと一言にいっても、主に州またぎGST(Integrated GST - IGST)、州GST(State GST - SGST)、中央GST(Central GST - CGST)の3種に分かれます。どの種類のGSTとして物品・サービス提供者にGSTを支払ったかによって、相殺できる仮受GSTも異なります。CGST法第49条5項は相殺可能な仮受GSTの種類及び相殺できる順番を次の通り規定しています。
仮払GSTの種類 | 相殺可能な仮受GST | 相殺の順番 |
仮払IGST | 仮受IGST、仮受SGST、仮受CGST | まず仮受IGSTと相殺し、その後仮払IGSTの残額がある場合は仮受SGST及び仮受CGSTと相殺する |
仮払SGST | 仮受SGST、仮受IGST | まず仮受SGSTと相殺し、その後仮払SGSTの残額がある場合仮受IGSTと相殺する(仮受CGSTとは相殺が不可) |
仮払CGST | 仮受CGST、仮受IGST | まず仮受CGSTと相殺し、その後仮払CGSTの残額がある場合仮受IGSTと相殺する(仮受SGSTとは相殺が不可) |
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |