インド内国法人がインド外国法人から物品の輸入を直接行う際、当該取引がIGST法第2条10項の定義する物品の輸入(Import of Goods)に該当する場合には、州またぎ(Inter - State)の物品の供給に当たり、IGSTの課税対象になります(IGST法第7条2項、5条1項)。物品の輸入のIGSTは、基本的に輸入者が通関手続きの際にリバースチャージ方式で納税します。
実務上はインド内国法人がインド外国法人から直接物品の輸入を行う場合以外にも、公海上取引(High Sea Sales)と呼ばれる取引や三国間貿易のように3社以上の法人が関与する輸入取引スキームが、採用されることもあります。公海上取引(High Sea Sales)や三国間貿易もGST法の規定する物品の供給に該当し、GSTの課税対象となるのでしょうか?
公海上取引(High Sea Sales)とは?
公海上取引とは、輸入者A社がインド国外のB社から物品を輸入するものの、A社は第三者であるインド国内の顧客C社と公海上取引契約を結ぶことで、通関手続き前に物品の所有権はA社からC社に公海上で移転させる取引を言います。この場合、通関手続きはC社が主体となって行うことになるため、関税等の支払いはC社が行います。
物品がインド国外にある原産港から発送された後、自国での消費のために通関前に荷受人が物品の所有権書類の裏書によって他の者に行う物品の供給は物品の供給、サービスの供給のいずれにも該当しないと規定されています(CGST法Schedule Ⅲの8(b))。よって、上記の例では、輸入者A社が物品の所有権を公海上で顧客C社に移転させる取引もGST法の物品の供給に該当しないことになります。
また、間接税・関税中央委員会(Central Board of Indirect Taxes and Customs - CBIC)は2017年8月1日付で通達Circular No. 33/2017-Customsを発行し、公海上取引での物品の輸入の場合には、通関手続きにて輸入申告書(Bill Of Entry - BOE)が申告される時のみに、GSTが課税及び徴収されることを示しました。さらに、A社からC社に物品の所有権が移転する際に、付加される物品の価格も通関手続き時のGST課税標準額の対象となります。つまり、公海上でA社からC社に物品の所有権が移転する際には、IGSTの納税は不要であるものの、その取引による付加価値に対してもC社が通関手続き時にIGSTを併せて納税することになります。
三国間貿易とは?
公海上取引と似て非なる取引として三国間取引も実務上は採用されることがあります。なお、三国間貿易は仲介貿易(Intermediary Trade又はMerchant Trade)と呼ばれることもあります。三国間取引とは、輸入者A社がインド国外のB社から物品を購入し、インド国内に輸入することなく、第三国の顧客C社に直送する取引を言います。物品はB社からC社に直送され、当該物品はインドの税関手続きを経ないことが特徴です。インド国内GST登録者であるA社が米国のC社から物品の注文を受け、A社はシンガポールのB社に対して、シンガポールB社から米国C社に直送してもらうよう依頼するようなケースがこの三国間貿易に該当します。この取引に関して請求書は2枚発行され、1枚はシンガポールB社からインドA社への請求書で、もう1枚はインドA社から米国C社への請求書になります。
CGST法 スケジュールⅢの7にて、インドに入国することなく非課税地域のある場所から非課税地域の別の場所への物品の供給はGST法の規定する物品の供給に該当しないと定めているため、三国間貿易はGSTの課税対象取引とはならないと解釈できます。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |