物品・サービスに関するGSTの納税義務は物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)に発生するため(CGST法第12条1項、13条1項)、GSTでは物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)は重要な概念の1つです。
実際の物品・サービスの供給に先立って、顧客に対して前払い金の支払いを求めることや、業務開始時に50%の前払いを求める契約を締結することは、実務上インドで多く見受けられます。このように前受金を受け取る場合には、物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)はどのように決定されているのでしょうか?GST法では物品の供給及びサービスの供給をそれぞれ分けて規定しているので、以下ではそれぞれ別個に見ていきます。
物品の供給に関する前受金
まず、物品の場合には、物品の供給の認識日(Time of supply)は、基本的に下記のいずれか早い日付になると規定されています(CGST法第12条2項)。
- 適格請求書の発行日、または適格請求書を発行することを義務付けられている最終日
- (物品の供給に関する支払いを受領する日)※通達Notification No. 66/2017 – Central Taxにて、簡易課税制度(Composition levy Scheme)を選択する以外のGST登録者においては、物品の供給に関しては「適格請求書の発行日、または適格請求書を発行することを義務付けられている最終日」に仮受GSTの納税義務が認識されると規定
上記の2つ目の規定に従うと前受金を受領したタイミングで物品の供給者に納税義務が認識されることになるため、前受金を受領した月のGSTR-1の月次申告にて、前受金に対する仮受GSTを開示する必要があります。
たとえば、10万ルピーの物品を販売する際に、実際の販売に先立って半額の5万ルピーを20××年4月に受領し、実際の物品供給及び適格請求書の発行は20××年8月に行い、残金の5万ルピーを20××年9月に受領したと仮定します。この場合、前受金5万ルピー分の仮受GSTの納税義務は20××年4月に、残金5万ルピー分の仮受GSTの納税義務は20××年8月に発生することになります。
上記の規定がCGST法が当初想定していた納税義務の認識に関する規定でした。ただ、前受金を受領するタイミングで仮受GSTの納税義務を認識するのは、コンプライアンス負荷が大きいことが考慮され、間接税・関税中央委員会(Central Board of Indirect Taxes and Customs - CBIC)は2017年11月15日付で通達Notification No. 66/2017 – Central Taxを発し、簡易課税制度(Composition levy Scheme)を選択する以外のGST登録者においては、「適格請求書の発行日、または適格請求書を発行することを義務付けられている最終日」にのみ仮受GSTの納税義務が認識されると規定されました。
よって、上記の例にて前受金5万ルピーを20××年4月に受領する場合であっても、適格請求書を発行する20××年8月に全額10万ルピーに対する仮受GSTの納税義務が認識されます。
サービスの供給に関する前受金
次に、サービスの場合には、サービスの供給の認識日(Time of supply)は、基本的に下記のいずれか早い日付になると規定されています(CGST法第13条2項)。なお、下記の「CGST法第31条に規定された期間内」とは基本的にはサービス供給から30日以内の期間を指します(CGST法第31条2項、CGST法細則第47条)。
- 適格請求書がCGST法第31条に規定された期間内に発行された場合:供給者が請求書を発行した日又は支払いを受領する日のいずれか早い日
- 請求書がCGST法第31条に規定された期間内に発行されていない場合:サービスの供給日又は支払いを受領する日のいずれか早い日
- 上記の2つ以外の場合:受領者が帳簿にサービスの受領を記載した日
物品の供給の場合とは異なり、サービスの供給に関しては別段の定めを規定する通達は発行されていなため、CGST法が当初想定していた納税義務の認識に関する規定の通り、前受金を受領する場合には受領した月にサービス供給者に前受金分の仮受GSTの納税義務が認識されます。
なお、上記の物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)は一般的な物品・サービスの供給に関する規定であり、リバースチャージ方式で納税が求められる取引やバウチャーの供給(Supply of Vouchers)等の取引に関する物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)の規定は異なるので注意が必要です(CGST法第12条3項、4項及び13条3項、4項等)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |