インド子会社がインドの銀行や金融機関から融資を受ける場合に、日本親会社がインド子会社に代わって会社保証を付与することは実務上よくあり、この会社保証を親会社が子会社に対して無償で行うことも多く見受けられます。以前より、この親子間の会社保証に関して、インドのGSTの課税性がたびたび議論されてきました。
そこで、本件は2023年10月6日に開催された第52回GST協議会(GST Council)にて決議、勧告された内容を踏まえる形で、間接税・関税中央委員会(Central Board of Indirect Taxes and Customs - CBIC)は、2023年10月27日付で通達Circular No.204/16/2023 - GST を発行し、「関係会社間で提供される会社保証」及び「取締役が自社に提供する個人保証」に関して下記の通り明確化させました。
関係会社間で提供される会社保証
関係会社が銀行または金融機関に対して会社保証を行う場合に、会社保証の提供に関する対価が支払われない場合であっても、GSTの課税対象のサービス供給に該当すると整理されました。従前より、CGST法 スケジュール Ⅰの2では関係会社間取引に関しては、たとえ対価の伴わない物品・サービスの提供であっても、事業の過程で提供される物品・サービスの提供はGST法上の供給(Supply)に該当すると規定しており、今回の通達での整理もこの従前の見解と一致した内容となっています。
また、CBICは2023年10月26日付の通達(Notification)No. 52/2023 – Central Tax及び2024年7月10日付の通達(Notification)No. 12/2024 – Central Taxにて、CGST法細則第28条に新たに「2項」を加筆及びその後修正し、関係会社(親会社)がインドに所在する子会社等に代わって銀行または金融機関に会社保証を提供した場合、保証提供に関するサービス供給の対価は、該当する年間保証額の1%または実際の対価のいずれか高い方とみなす旨を規定しました。加えて、受領側(子会社等)が全額の仕入税額控除を使用できる場合、請求書に記載されたサービス供給の金額が保証提供に関するサービス供給の対価とみなされます。また、CBICは2024年7月11日付の通達(Circular)No. 225/19/2024 – GSTでさらなる実務上の懸念や疑問点を明確化しています。
なお、本規制は銀行または金融機関に提供する会社保証のみが対象であることに注意が必要です。
取締役が自社に提供する個人保証
一方で取締役が、自らの会社が銀行または金融機関から融資を受ける場合に、会社から対価を受けることなく個人保証を与えた際には、この個人保証の提供はGSTの課税対象のサービス供給に該当こそするものの、サービス供給の価値はゼロとみなされ、GSTは課税されないと整理されました。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |