インドの退職金(Gratuity)は1962年 退職金支払い法(Payment of Gratuity Act, 1972)で規定されています。この法律の適用対象は従業員数が10名以上の施設や店舗(Shop or Establishment)等であり、雇用主は5年以上勤務した従業員が退職する際に、退職金を支払う必要があります。
退職金の計算方法は次の通りです。
- 退職金=最終給与額(Last drawn salary)×15/26×勤続年数
なお、最終給与額(Last drawn salary)は基本給(Basic wages)及び補填手当(Dearness Allowance)の合計額になります。また勤続年数の数え方としては6か月を超えれば1年と見なして数えます。たとえば、7年6ヶ月14日間の勤務した従業員であれば勤続年数8年として退職金が計算されます。
また、会計処理上では数理人(Actuary)と呼ばれる専門家に将来発生する退職給付の金額を見積もってもらい、数理人の発行する証明書に基づき、退職給付の引当金を決算処理時に費用計上します。実際の退職金支払い時は退職給付引当金を取り崩す仕訳を切るのは日本と同様です。
退職金の税務
インドでは退職金は給与所得に含めた上で個人所得税を計算します(インド所得税法17条1項3号)。日本の所得税法では退職金は退職所得という区分にて、分離課税が認められておりますが、インドでは給与所得として総合課税になります。
退職金は200万ルピーまでは個人所得税の非課税が設定されています(同法第10条10項、通達 Notification no. S.O. 1213(E))。日本の所得税法で認められている退職所得控除額は勤続年数に比例して増額しますが、インドの場合は勤続年数によらず、固定額にて非課税枠が規定されている点が異なります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |