プロフォーマ請求書(Proforma Invoice)とは、実際の取引が行われる前に、売り手が買い手候補に提供する予備的な請求書又は見積書のことです。これは費用の見積もりであり、将来の販売条件を説明し、意思表示の同意書としての役割を果たします。また、物品・サービスの提供前に前払金を買い手に請求する場合にも、プロフォーマ請求書が発行せれることがあります。
プロフォーマ請求書は日々の物品・サービス提供、国際貿易、通関、資金調達などインドの商習慣上、様々な場面で使用されています。
プロフォーマ請求書に対するGSTの課税
GST法ではプロフォーマ請求書に関する定義や規定はないため、物品・サービスの売り手が見積書としてプロフォーマ請求書を発行する際には、必ずGST額を記載しないといけない訳ではありません。ただ見積書という性格上、売り手はプロフォーマ請求書にGST額を記載し、支払必要額を税込みで表示することが多いです。
一方で、前払金を請求する目的でプロフォーマ請求書を発行する際には、売り手はプロフォーマ請求書にGSTを記載すべきです。というのも、物品・サービスに関するGSTの納税義務は物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)に発生し(CGST法第12条1項、13条1項)、基本的に物品・サービスの供給の認識日(Time of supply)は「適格請求書の発行日」又は「対価の支払いを受領する日」のいずれか早い日付です。そのため、前払金を請求する目的でプロフォーマ請求書を発行した場合、その対価の前払いを受ける月に納税義務が発生し、売り手は前払金と共にGSTを買い手から徴収する必要があります。
また、売り手はプロフォーマ請求書を発行するだけでは不十分であり、GST法の求める期日までに適格請求書(Tax Invoice)も買い手宛に発行する必要があります(CGST法第31条1項)。なお、買い手の視点から見ても、プロフォーマ請求書を基に支払った仮払GST(Input GST)では、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を使用できないため、必ず適格請求書を受領する必要があります(CGST法第16条)。実務上、売り手はプロフォーマ請求書のみを発行し、適格請求書の発行を失念してしまっているケースがありますので、買い手は取引先(売り手)から適格請求書までしっかり受領するようにして下さい。
買い手のインド所得税法上での源泉徴収税(Tax Deducted at Source - TDS)の源泉徴収義務
プロフォーマ請求書に記載されたサービスが、インド所得税法上での源泉徴収税(Tax Deducted at Source - TDS)の源泉徴収対象であった場合には、買い手はプロフォーマ請求書に基づいて前払いをする際にはTDSの源泉徴収をし、基本的に翌月7日までにTDSの納税をする必要があります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |