GST登録者には一定の場合にGST法が規定するDelivery Challanと呼ばれる書類の発行を求められます。GSTの納税負担者である最終消費者の手元まで物品が届くまでのサプライチェーンの途中にて、盗難や流出などの理由で物品が紛失してしまうケースがあります。基本的にGST登録者は物品の供給時には適格請求書を発行する必要がありますが、適格請求書を発行しない物品の輸送時にDelivery Challanを発行させることで、物品の輸送を追跡することが可能となります。
荷送人は下記の場合には物品の輸送時に適格請求書に代えて、Delivery Challanを発行することになります(CGST法細則第55条1項)。
- 液体ガスの供給で、供給者の事業所から搬出される時点の供給量が不明な場合
- ジョブワークへの物品の輸送の場合
- 供給以外の理由による物品の輸送の場合
- GST当局より通知されるその他の供給の場合
Delivery Challanには下記を記載することが求められています。
- 発行日付及び1系列または複数系列の16文字を超えない連続シリアル番号であるDelivery Challan番号
- 荷送人の法人名、住所、GST番号
- 荷受人の法人名、住所、GST番号または固有 ID 番号
- 物品のHSNコード及びその概要
- 数量(供給される正確な数量が不明な場合は、仮の数量)
- 課税価格
- (輸送が荷受人への物品供給の場合)税率及び税額(CGST、SGST、IGST、Union territory taxまたはCess)
- (州間をまたぐ供給の場合)供給地
- 署名
また、輸送が物品供給の場合には荷送人はDelivery Challanの複製を3部準備した上で、それぞれに「ORIGINAL FOR CONSIGNEE」「DUPLICATE FOR TRANSPORTER」「TRIPLICATE FOR CONSIGNER」と記載します(CGST法細則第55条2項)。
Delivery Challanが発行されるケース
例えば、下記のような場合にはDelivery Challanが発行されることになります。
<ケース1> 物品供給に該当するものの、売り手は物品を買い手の倉庫に輸送した後に、買い手側での検収完了(検収不合格品は売り手に返送される)をもって始めて、物品供給の事実や最終的な供給量が決定されることがあります。この場合、売り手は物品の輸送時には適格請求書を発行することができないため、Delivery Challanを発行した上で物品の郵送を行う必要があると考えられます。
なお、輸送される物品が買い手への物品供給を目的とするものであるにもかかわらず、物品の移転時に適格請求書を発行できなかった場合、物品供給者は物品引渡し後に適格請求書を発行する必要があります(CGST法細則第55条4項)。
<ケース2> ひとまとめの物品供給であるため適格請求書は1枚のみ発行されるものの、売り手は物品を一定のロットごとに買い手に輸送する場合があります。この場合には売り手は、最初のロットが輸送される前までに適格請求書を発行する必要があります。売り手が後続のロットを輸送する場合には、売り手は適格請求書を参照させたDelivery Challanを発行することになります。なお後続するロットの輸送時には対応するDelivery Challan及び適格請求書の写しを添付する必要があります。そして、売り手が最後のロットを買い手に輸送する際に適格請求書が発送されることになります(CGST法細則第55条5項)。
<ケース3> 自社で同州内に保有する倉庫Aから倉庫Bに物品を輸送する場合には物品供給には該当しないものの、Delivery Challanに基づいてサンプル品の移転を行う必要があると考えられます。なお、自社が他州に保有する倉庫への物品の輸送に関してはこちらをご参照ください。
<ケース4> 販売代理店に展示用のサンプル品を無償で輸送する場合には物品供給には該当しないものの、Delivery Challanに基づいてサンプル品の移転を行う必要があると考えられます。
<ケース5> 作家が自分の作品を様々なギャラリーに運びそこで展示された後に買い手が作品を選べばそのギャラリーから販売されるような場合には、作家はギャラリーからギャラリーへの美術品の輸送時にDelivery Challanに基づいて作品の移転を行う必要があると考えられます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |