インド外国法人であっても、インド子会社やインド国内の取引先から役務提供契約・ロイヤリティ契約などに基づきインド国内源泉の所得が発生している場合は、インドでの所得税申告が必要になります。詳細はこちらをご参照ください。また一定のインド国内源泉所得がある個人も個人での所得税申告が必要となります。
では、所得税申告義務があるにもかかわらず、所得税申告をしなかった納税者にはどのような罰則があるのでしょうか?また、インド外国法人がインド子会社等の関連会社と国際取引をしている場合には、Form3CEBや移転価格文書(TP report)のコンプライアンス対応が必要になる事もありますが、これらの移転価格に関するコンプライアンス違反に係る罰則に関しても以下でまとめます。
所得税申告義務に関する罰則規定
まず、下記の所得税申告の期日以内に所得税申告を行わない納税者には、5,000ルピーのペナルティが課されます(インド所得税法第234F条)。ただ課税所得額が50万ルピーを超えない納税者の場合はこのペナルティは最大1,000ルピーまでです。以前までこのペナルティ額は10,000ルピーでしたが、2021年度より5,000ルピーに減額されています。
納税者 |
所得税申告期日(インド所得税法第139条) |
個人(税務監査対象者を除く) | 翌会計年度の7/31 |
法人 | 翌会計年度の10/31 |
国外関連者と取引がある法人 | 翌会計年度の11/30 |
次に、延滞利息についてです。予定納税等を行っておらず所得税申告の期日時点で納税必要額があるにもかかわらず、所得税申告を期日までに行わなかった場合には、申告期日から「申告がされる月まで」又は「ベストジャッジメントがされる月まで」の期間にわたって、納税必要額の1%の延滞利息が月次で発生します(インド所得税法第234A条)。
さらに、意図的に期日通りに所得税申告を行わなかった納税者には、以下の懲役および罰金が科せられる可能性もあります(インド所得税法第276CC条)。
違反が発見されなければ脱税していたであろう税額が2,500,000ルピーを超える場合 | 6ヶ月以上7年以下の懲役および罰金 |
それ以外の場合 | 3ヶ月以上2年以下の懲役および罰金 |
所得税当局の担当官が一定の所得税コンプライアンス違反者に課すことができるペナルティ
インド所得税法は、所得税コンプライアンス違反を行った納税者に対して、所得税当局の担当官の指示、命令に基づいてペナルティを課すことができる旨も規定しています。ここでは所得税申告の義務違反、Form3CEB申告の義務違反、移転価格文書(TP report)の保管/提出義務違反についてまとめます。なお、Form3CEB申告や移転価格文書(TP report)の保管/提出義務コンプライアンスについてはこちらをご参照ください。
コンプライアンス違反 | ペナルティ額 | 参照条文 |
所得税未申告や過少申告(Under-reported incomeに該当する場合) | Under-reported incomeに係る納税必要額の50%相当 | インド所得税法第270A条7項 |
所得税申告や国際取引申告の虚偽申告(Misreporting incomeに該当する場合) | Under-reported incomeに係る納税必要額の200%相当 | 同法第270A条8項 |
Form3CEBの申告違反 |
100,000ルピー及び国際取引額の2%相当 |
同法第271BA条、271AA条 |
移転価格文書(TP report)の保管義務違反 | 国際取引額の2%相当 | 同法第271AA条 |
移転価格文書(TP report)の提出義務違反 | 国際取引額の2%相当 | 同法第271G条 |
上述の罰則に加えて、所得税申告の期日までに申告をしない場合には、繰越欠損金(Carry forward of losses)の翌年以降への繰越が認められない(インド所得税法第139条3項)等の不利益を納税者は被ることになります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |