一連の税務調査後に納税者の支払うべき未納税額等、その利息及びペナルティー額がGST当局によって確定されると、GST当局は更正処分通知(GST DRC- 07)を納税者に対して発行します。更正処分通知の内容に不服がない場合には、納税者は更正処分通知に記載のある金額を速やかにGST当局に対して納税していくことが求められます。一方で、更正処分通知に不服がある納税者は、更正処分通知の発行日から3か月以内に、Appellate Authorityに訴えることができます。
更正処分通知を受領後に納税者のとれるアクションとしては、基本的に「納税をする」又は「不服申し立てを行う」のいずれかになると言えます。そのため、更正処分通知の発行日から3か月経過後も納税者がいずれのアクションも取られない場合には、納税者から更正処分額の徴収を確実に進めるべく、GST当局はCGST法第79条の規定する下記のような強硬的な手段を単体又は組み合わせて取ることができます。この強硬的な手段はGSTを徴収するためにGST当局が行う最終手段と言えるでしょう。
納税者の取引先から間接的に未払更正処分額を徴収する方法
GST当局の担当官は、未払更正処分額(以下、GST債務)のある納税者(以下では、法人A)に対して日常の業務上にて未履行の債務がある者に対して(以下では、法人B)、GST DRC-13というフォーマットにて通知を発行しGST当局に対して未履行の債務の一部またはその全部(最大、GST債務額まで)を法人AでなくGST当局に対して支払うよう要求することができます(CGST法第79条1項c号i、CGST法細則第145条1項)。この通知を受領した法人Bが債務額をGST当局に対して支払わなかった場合には、法人BがGST債務の不履行者とみなされます(CGST法第79条1項c号iii)。この通知を受領したにもかかわらず、法人BがGST当局でなく法人Aに債務の支払いをした場合には、法人Bは個人的にGST当局に対してGST債務を納税するよう求められます(CGST法第79条1項c号vi)。
また、法人BがGST当局に対してGST債務を納税した場合には、法人Bの当納税は法人Aの権限に基づいて納税したものとみなされ、元々日常の業務上であった法人Bから法人Aへの債務は納税したGST債務の範囲において正当かつ十分に免除されたものとみなされます(CGST法第79条1項c号v)。
実務上はこの通知を受領した法人Bは、法人Aに対してこの通知を受領したことを連絡した上で、法人Aへの支払いを留め、どのように対応していくか法人Aと確認をすることが多いです。法人Aのように更正処分通知を受領したにもかかわらず、放置しておくと、自らの取引先である法人Bにまで迷惑をかけることになりかねません。そのため、更正処分通知の受領後は速やかに「納税をする」又は「不服申し立てを行う」の意思決定を行い、実行していくことが求められます。
未払更正処分額を徴収するその他の方法
「納税者の取引先から間接的に徴収する方法」以外にも下記のような方法をGST当局は取ることができます。
- 納税者に対してGST当局が支払うべき金額(GST還付等)からGST債務分を差し引く(CGST法第79条1項a号)
- GST当局の管理下にある納税者に帰属する物品を差し押さえ、オークション等で販売する(CGST法第79条1項b号)
- 納税者に帰属する物品や不動産を30日間差し押さえ、未払いが継続する場合にはオークション等で販売する(CGST法第79条1項d号)
- 土地歳入の延滞であるかのように取り扱う(CGST法第79条1項e号)
- 裁判官からの罰金であるかのように取り扱う(CGST法第79条1項f号)
なお、上記の強硬的なGST徴収方法の対象とならずとも、GST監査、税務調査等の一連の手続きの後にGST当局の担当官(コミッショナー)がGST当局の税収を保護するために必要だと判断した場合には、文面でのオーダーを発行し、納税者の財産(銀行口座を含む)を暫定的に差し押さえることができます。この暫定的な差し押さえの期間は最大1年間です(CGST法第83条1,2項)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |