源泉徴収税とは、サービスの受領者が供給者にサービス対価を支払う際に一定の税率で差し引いて当局に納税する税金の一種であり、一般的に源泉徴収税は所得税法上での概念になります。インド所得税法上も源泉徴収税(Tax Deducted at Sources - TDS)を規定していますので、一般的なインドの源泉徴収税に関してはこちらをご参照ください。
一方で、GST課税網を広げることでGST納税者の取引を正確に捕捉し脱税を牽制すること等に資する目的でインドの間接税である物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)にも、源泉徴収税(Tax Deduction at Sources - TDS)という概念があります。下記の者(以下、源泉徴収者(Deductor))が物品・サービスの供給者に契約上の物品・サービスで25万ルピーを超える支払い物品・サービスの供給者(以下、被源泉徴収者(Deductee))に行う際には、2%(CGST:1% + CGST:1% / IGST:2%)のTDSを源泉徴収する必要があります(CGST法第51条1項)。
- 中央政府又は州政府の当局
- 地方公共団体
- 政府機関
- その他協議会の勧告に基づき政府が通知する者(Notification No. 50/2018 – Central Tax / Notification No. 50/2018 – Central Tax)
- (4.の一環として2024年10月10日以降)GST登録者からメタルスクラップの供給を受けるGST登録者(Notification No. 25/2024 – Central Tax)
なお、源泉徴収されたTDSは被源泉徴収者(Deductee)の「電子現金台帳(Electronic Cash Ledger)」にクレジットとして反映され、被源泉徴収者(Deductee)は自らのGST納税義務で利用可能です(CGST法第51条5項、CGST法細則第66条2項)。
TDSの対象となる物品・サービス供給取引の閾値は25万ルピーですが、GSTを除いた供給価額が閾値の判断基準になり、個々の取引額が25万ルピーであっても総取引額が25万ルピー以上であればTDSの対象になります。一方で、源泉徴収者(Deductor)の州と物品・サービス供給地(Place of Supply)が同州で(=同一州内取引になり、SGST及びCGSTを課税)、被源泉徴収者(Deductee)の登録州が別州の場合はTDSの対象とはなりません(CGST法第51条1項但し書き)。ある州で源泉徴収者(Deductor)がTDSとして徴収したSGST及びCGSTを、別州の被源泉徴収者(Deductee)の電子現金台帳(Electronic Cash Ledger)のクレジットに移管させるのが困難なためです。表にまとめると下記の通りです。
源泉徴収者の州 | 物品・サービス供給地 | 被源泉徴収者の登録州 | TDSの適用 |
Haryana州 | Haryana州 | Haryana州 | 適用あり |
Haryana州 | Haryana州 | Karnataka州 | 適用なし |
Haryana州 | Karnataka州 | Karnataka州 | 適用あり |
その他のGSTコンプライアンス
源泉徴収者(Deductor)は源泉徴収したTDSをGST当局に納税し、翌月の10日までにFORM GSTR-7にて電子申告する必要があります(CGST法第51条2項、第39条3項、CGST法細則第66条1項)。加えて、源泉徴収者(Deductor)は被源泉徴収者(Deductee)に源泉徴収証明書としてFORM GSTR-7Aを発行します(CGST法第51条3項、CGST法細則第66条3項)。また、TDSを徴収する義務のある者は総売上(Aggregate Turnover)によらず、GST登録の義務があります(CGST法第24条vi、CGST法細則第12条)。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |