マネーロンダリングを防止し、ブラックマネーを排除することを目的とした規制が1961年インド所得税法(Income-Tax,1961)には多く用意されていますが、そのうちの1つがインド所得税法第68条です。同条では会計帳簿に記録された入金額の内、納税者がその入金の性質(nature)及び入金元(source)に関して所得税当局の担当官に満足のいく説明が提供できない場合には、課税対象となると規定しています。
また、借り入れや増資に関する入金に関しては、その貸主や出資主自体が当該企業に支払った貸付金や出資に充てた原資の性質(nature)及び入金元(source)の説明までをも行うことが当該企業には求められています。増資に関するこの出資元の原資(source of sourceと呼ばれます)の説明はインド居住者からの増資のみが対象ですが、借り入れに関してはインド居住者のみならずインド非居住者からの借り入れも対象となっています。
所得税当局の担当官が、納税者はある入金額に対して満足のいく説明をしていないと判断した場合には、その入金額に対して基本税率60%(インド所得税法第115BBE条1項)、加算税25%(2016年財政法第2条9項但し書き)が課せられます。この入金額に対してはいかなる損金の計上や所得税控除も適用できないため(インド所得税法第115BBE条2項)、入金額がそのまま課税所得となります。加えて、この十分な説明が付かない入金額を納税者が所得税申告の際に自ら開示しておらず、税務調査等を介して所得税当局の担当官が指摘した場合には、担当官は納税者に10%のペナルティを課すことができます(271AAC条)。
会計帳簿に記録された入金額で適切な説明ができないものは高税率で所得税が徴収されることになるため、日頃から適切に会計帳簿を整理した上で不明な入金があった際にはその都度確認を行い、入金の性質及び入金元を明らかにしておくことが求められます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |