インドの物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)は付加価値税(間接税)であり、基本的にGST税額の負担者は最終消費者になります。最終消費者に物品・サービスが供給されるまでのサプライチェーン内にいる事業者は、対価の一部として預かったGSTを納税する義務を負うものの、GSTを負担することはありません。サプライチェーンを通してこの最終消費者に雪だるま式にGSTを転嫁していく仕組み(Tax-Chainと呼びます)を可能にするために、日本の消費税法と同様でインドのGST法でも事業者には仮払GST(Input GST)の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が認められています。この仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用するためにはCGST法第16条の規定する一定の条件を満たす必要があります。
一方で、たとえ一定の条件を満たしている場合であったとしても、そもそも仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用できない仮払GST(Input GST)もあります。CGST法第17条では、一定の仮払GST(Input GST)に関する仕入税額控除の利用を制限しており、これらの仮払GST(Input GST)をインドではBlocked Creditと呼びます。なお、このBlocked Creditは、直接費用計上又は固定資産計上した上で減価償却を通して費用計上する会計処理が一般的です。よって、仮払GST(Input GST)がBlocked Creditに該当する場合には、仮払GST(Input GST)が事業者の損益に直接影響を及ぼすことになるため、仮払GST(Input GST)がBlocked Creditに該当するか否かは重要になります。
CGST法第17条の規定する仕入税額控除が利用できない仮払GST
まず、GST登録者が事業目的のみならず個人利用等のその他の目的でも物品・サービス供給を受けた場合には、事業目的のみに係る仮払GST(Input GST)のみ仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が利用が認められています(CGST法第17条1項)。逆に言えば、個人利用等のその他の目的で受けた物品・サービスにかかる仮払GST(Input GST)はBlocked Creditとなります。
また、GST登録者が0%税率取引を含む課税対象取引(Taxable Supplies including zero-rated supplies)を行うためのみならず非課税取引(Exempt Supplies)を行うために物品・サービス供給を受けた場合、課税対象取引(Zero-rated supplyを含む)に係る仮払GST(Input GST)のみ仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が利用が認められています(CGST法第17条2項)。つまり、非課税取引(Exempt Supplies)に係る仮払GST(Input GST)は仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用できず、CGST法細則第42条及び43条の規定する一定の基準で、比例的に利用できない仕入税額控除を計算し、費用計上する必要があります。
加えて、下記のような一定の種類の物品・サービス供給に係る仮払GST(Input GST)も仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)は利用が認められず、Blocked Creditとなります(CGST法第17条5項)。ただ下記に列挙されている物品・サービス供給であっても例外的に仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用が認められるケースもあるため、詳細はCGST法第17条を確認する必要があります。
- 乗車定員(運転手を含む)が13人以下の自動車
- 船舶および航空機
- 自動車、船舶、航空機に関連する一般的な保険、サービス、修理およびメンテナンス
- 飲食料品、屋外ケータリング、美容施術、健康サービス、美容整形手術、上記の自動車、船舶、航空機のリース、レンタル、賃借、生命保険、健康保険
- クラブ、ヘルスセンター、フィットネスセンターのメンバーシップ
- 休暇中の従業員に提供される旅行手当
- 不動資産(工場機械を除く)の建設のために提供される工事請負サービス
- 課税対象者が自己の勘定で不動資産(工場機械を除く)を建設するために受領した物品・サービス
- 簡易課税制度(Composition levy)基づき納税された物品・サービス
- 非居住者である課税対象者(a non-resident taxable person)が受領した物品・サービス(自ら輸入した物品を除く)
- 2013年インド会社法第135条が規定する社会的責任(Corporate Social Responsibility - CSR)に係るコンプライアンスに関連する活動に使用された、または使用されることを意図した物品・サービス
- 個人消費のための物品・サービス
- 紛失、盗難、破壊、償却、または贈答品や無料サンプルの方法で処分された物品
- CGST法第74条、第129条および第130条の規定に従って納税された税額
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |