日本の消費税法と同様でインドのGST法でも事業者には仮払GST(Input GST)の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が認められています。この仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の詳細や利用要件はこちらでまとめています。ただ、たとえ仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の全利用要件を満たしている場合であったとしても、そもそも一定の仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)は仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用が制限されております。
この仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用できない仮払GST(Input GST)は、直接費用計上をする又は固定資産として計上した上で減価償却を通して費用計上する会計処理が一般的です。一定の仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)が仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が認められない場合には、当該仮払GST(Input GST)は事業者の損益計算書に直接影響を及ぼすことになるため、仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)が仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用できるか否かの判定は重要となります。
CGST法第17条の規定する仕入税額控除が利用できない仮払GST
まず、GST登録者が事業目的のみならず個人利用等のその他の目的でも物品・サービス供給を受けた場合には、事業目的のみに係る仮払GST(Input GST)のみ仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が利用が認められています(CGST法第17条1項)。逆に言えば、個人利用等の事業の目的以外で受けた物品・サービス仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)は仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が認められません。
また、GST登録者が受けた物品・サービス供給が部分的には「課税対象取引(Zero-rated supplyを含む)」を行うためで、部分的には「非課税取引(Exempt Supplies)」を行うためである場合には、「課税対象取引(Zero-rated supplyを含む)」に係る仮払GST(Input GST)のみ仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)が利用が認められています(CGST法第17条2項)。つまり、非課税取引(Exempt Supplies)に関連する仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)は仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用できず、CGST法細則第42条及び43条の規定する一定の基準で、比例的に利用できない仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を計算し、費用計上する必要があります。
加えて、下記のような一定の種類の物品・サービスの仕入(Inward Supply)に係る仮払GST(Input GST)は、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用がそもそも認められていません(CGST法第17条5項)。これらはBlocked Creditと呼ばれ、個人消費に使われる傾向が高いもの、固定資産に帰するもの等が一般的にBlocked Creditとして限定列挙されています。そのため、Blocked Creditに該当する物品・サービスの仕入(Inward Supply)を受領するGST登録者は、たとえ当該仕入(Inward Supply)が事業目的のみに利用され、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の全利用要件を満たしていた場合であっても、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用ができない点に注意が必要です。
- 乗車定員(運転手を含む)が13人以下の自動車
- 船舶および航空機
- 自動車、船舶、航空機に関連する一般的な保険、サービス、修理およびメンテナンス
- 飲食料品、屋外ケータリング、美容施術、健康サービス、美容整形手術、上記の自動車、船舶、航空機のリース、レンタル、賃借、生命保険、健康保険
- クラブ、ヘルスセンター、フィットネスセンターのメンバーシップ
- 休暇中の従業員に提供される旅行手当
- 不動資産(Plant and Machineryを除く)の建設のために提供される工事請負サービス(Works Contract)
- 課税対象者が自己の勘定で不動資産(Plant or Machineryを除く)を建設するために受領した物品・サービス
- 簡易課税制度(Composition levy)から受領する物品・サービス供給
- 非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)が受領した物品・サービス(自ら輸入した物品を除く)
- 2013年インド会社法第135条が規定する社会的責任(Corporate Social Responsibility - CSR)に係るコンプライアンスに関連する活動に使用された、又は使用されることを意図した物品・サービス
- 個人消費のための物品・サービス
- 紛失、盗難、破壊、償却、又は贈答品や無料サンプルの方法で処分された物品
- FY2023-24までの期間に関してCGST法第74条の規定に従って納税された税額
- ※ただ上記に列挙されている物品・サービス供給であっても、一定の条件下では例外的に仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用が認められるケースもあるため、詳細はCGST法第17条を確認する必要があります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |