インド国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、所得税を源泉徴収しなければなりません。インドでは源泉徴収される源泉所得税は、その所得の性質によりTDS(Tax Deducted at Source)とTCS(Tax Collected at Source)の2種類があります。
また、非居住者に対して支払を行う際、インドとその非居住者等の居住地国との間で租税条約が結ばれている場合には、その租税条約に定めるところにより、インド国内税法に基づく一定の要件を満たすことにより租税条約に規定された税率を適用することが可能です(インド所得税法第90条(2)項)。
源泉徴収義務は支払いを行う側にあり、源泉徴収を忘れた場合には自身で負担して納税しなければならなくなる可能性があることに注意が必要です。
尚、源泉徴収者は予め源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number - TAN)取得し、被源泉者の納税番号(Permanent Account Number - PAN)と自身の源泉徴収番号を紐づける必要があります。紐づけは四半期毎に義務付けられている源泉徴収の申告書にて行います。
■参考ページ
源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number-TAN)とは?
源泉徴収が必要になる支払は?
源泉徴収が必要になる代表的な支払いと、その源泉徴収税率は下記の通りです。それぞれの支払には免税金額が設けられおり、免税金額閾値を超える年間支払金額に対して源泉徴収が必要となります。
支払項目 | 源泉t徴収税率 | 根拠条文(所得税法) |
給与 | 個人所得税の計算により変動 | 第192条 |
貸付金の利子 | 10% | 第194A条 |
専門家費用 | 10% | 第194J条 |
仲介料(コミッション) | 5% | 第194H条 |
契約に基づく支払 | 1% or 2% | 第194C条 |
賃借料(土地、建物) | 10% | 第194I条 |
賃借料(工場、設備機械) | 2% | 第194I条 |
源泉額の納付及び申告期限はいつ?
上述の所得に関し源泉徴収した金額は翌月7日までに納税する必要があります。また四半期ごとに源泉額の申告義務があります(所得税法第206条)。給与の源泉税についてForm 24Q、給与以外の支払いに関する源泉税についてはForm 26Qを用いて下記の期限内にWEBページ(TRACES portal)にて申告を行います。
対象時期 | 申告期限 |
第1四半期(4-6月期) | 7月31日 |
第2四半期(7-9月期) | 10月31日 |
第3四半期(10-12月期) | 1月31日 |
第4四半期(翌1-3月期) | 5月31日 |
源泉徴収証明書(Form 16 & Form 16A)の発行について
被源泉側は源泉徴収者から源泉徴収証明書を受け取ることにより、適切に源泉税の納付及び申告が行われたことを確認可能です。給与支払者は1年に1度、翌年の5月31日までに被源泉者に源泉証明書(Form 16)を交付する必要があります。また給与以外の支払いに関しては四半期に1度、申告日より15日以内に源泉証明書( Form 16A)を被源泉側に交付する必要があります(所得税法第203条)。源泉徴収者はWEBページ(TRACES portal)より源泉徴収証明書をダウンロードすることが可能です。
被源泉者の控除金額(クレジット)の確認方法
支払いから源泉徴収されたTDSは、被源泉者のPAN番号と紐づけられています。被源泉者は確定申告時に支払税額からの控除が可能です。源泉徴収者が納付・申告後、被源泉者はForm26ASといわれるWEBページ(TRACES portal)で取得できる様式で控除可能金額が確認可能です。
インドの源泉徴収税(TDS)にかかる遅延利息・ペナルティー
インドの源泉徴収税(TDS)にかかる遅延利息・ペナルティーには納付にかかるものと申告にかかる種類があります。
- 源泉徴収対象の支払にもかかわらず源泉徴収が漏れていた又は納付が遅延した場合(所得税法第234A条)
- 申告の遅延にかかる遅延金(所得税法234E条)
1の源泉徴収漏れ又は納付の遅延にかかる利息は、月額1.5%となります。2の申告遅延にかかる遅延金は、1日あたり200ルピーとなります。また、別途ペナルティーが科せられる場合があります(所得税法271H条)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |