インドの移転価格で必要となるコンプライアンスは、海外の関連会社との取引があった場合に必要となる勅許会計士発行の証明書(Form 3CEB)とBEPSの行動13に基づく文書化が要求されています。
会計士による証明書(Form 3CEB)
インド所得税法第92E条の規定により、インド法人が海外の関連会社と1ルピーでも取引をある場合は、インドの勅許会計士(Chartered Accountant)が発行するForm 3CEBの取得が必要になります。Form 3CEBは法人税申告時に、申告書と合わせて提出が求められます。(移転価格税制が適用される場合の所得税申告期限は11月30日)
文書化
3層構造のマスターファイル・国別報告書(Country by Country Report - CbCR)・ローカルファイルの整備が義務付けられています。
マスターファイル
多国籍企業グループの組織・財務・事業等、グループの活動全体に関する基本情報が記載されます。適用基準は以下の通りです。留意すべき点としては、適用基準が日本の1000億円や欧州の7億5千万ユーロと比較して著しく低く、親会社では必要とされていないのにインド法人のみが対象となる場合があります。
- グループの直近会計年度において連結グループ収益が50億ルピー超 かつ
- 国際取引金額が5億ルピー超又は1億ルピー超の無形資産取引
国別報告書(CbCR)
多国籍企業グループの国別の所得・納税額、各国別の活動の概況を報告します。親会社又は代理親会社で以下の適用基準を満たす場合提出が必要となります。
- グループの直近会計年度において連結グループ収益が550億ルピー超
ローカルファイル
関連者との国際取引金額が年間1,000万ルピー超の場合(関連者間での特定国内取引は年間総額2億ルピー超の場合)は国際取引が適正な移転価格レンジに収まることを説明するローカルファイルの作成(文書化)が義務付けられています。文書は提出が必要になるものではありませんが、税務当局からの求めに応じて30日以内に提出しなければなりません(所得税法細則第10D条)。 また、基準金額以下の場合は、作成の義務はないが移転価格にかかる文書や資料を作成する必要がない訳ではなく取引を適切に説明できる最低限の書類・情報を整理しておく必要があります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |