GST法はGST登録をしている又はGST登録する義務がある者(Taxable person)にGSTを徴収の上、納税することを求められており(CGST法第9条1項)、またGST登録者(Registered Person)に仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の利用が認められています(CGST法第16条1項)。法的にGST登録することで初めて事業者はGST法下での物品・サービスの供給者と認められ、物品・サービスの受領者から法的にGSTを徴収するこが可能になります。よって、GST登録はGSTコンプライアンスの一歩目と言えます。
なお、GST法はGST非登録者のGSTの徴収を禁じています(CGST法第32条)。
GST登録が必要な者
GST法では一定金額以上の総売上(Aggregate Turnover)を満たす供給者に、課税供給(Taxable Supply)を行う州でGST登録することを求めています(CGST法第22条1項)。同州内に複数の事業の場所(Places of Business)を有する供給者は、主な事業の場所を設定した上で1つのGST登録のみを行うこと、事業の場所ごとに複数GST登録することもできます(CGST法第25条2項)。一方で、複数の州に事業の場所を有しており、各州から課税供給(Taxable Supply)を行う場合は、それぞれの州でGST登録が必要になりますが、詳細はこちらでまとめています。
さて、GST登録が求められる一定金額以上の総売上(Aggregate Turnover)とは基本的に下記の表の通りです。
事業者の種類 | 総売上(Aggregate Turnover) |
物品・サービスの供給事業者 |
一般州の場合:200万ルピー超 特別州の場合:100万ルピー超 |
物品供給のみを行う事業者 (Notification No. 10/2019 CT) |
一般州の場合:400万ルピー超 特別州の場合:100万ルピー超 (Arunachal Pradesh/Meghalaya/Sikkim/Uttarakhand/Puducherry/Telangana州の場合は200万ルピー超) |
※特別州とは、Manipur, Mizoram, Nagaland, Tripura州を指し(CGST法第22条 説明書きiii)、これらの州に支店等を持ち課税供給をする者の場合が「特別州の場合」に該当します。
一方で、上記の表に関係なく以下に列挙する者はGST登録が必須です(CGST法第24条、第23条2項、Notification No. 10/2017 CT)。
- 州間供給(Inter-State Supply)を行う者(200万ルピー未満の州間のサービス供給を行う者を除く)
- 臨時納税者(Casual Taxable Person)
- リバースチャージ方式の納税が必要な者
- CGST法第9条5項でのGST納税が求められる者
- 非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)
- GST法の源泉徴収税(Tax Deducted at Source - TDS)を徴収する必要がある者
- 代理人であるか否かを問わず、他の課税対象者に代わって物品・サービス供給する者
- 仕入税額の配分を行う者(Input Service Distributor)
- GST法の源泉徴収税(Tax Collection at Source - TCS)を徴収する必要がある者
- Eコマース事業者を介して物品・サービス供給を行う者
- GST法の源泉徴収税(Tax Collection at Source - TCS)を徴収する必要があるEコマース事業者
- 一定のオンライン情報データアクセス・読み込み(Online Information Database Access and Retrieval - OIDAR)サービスを行う者
- インド国外からインド国内にオンラインマネーゲームを供給する者
- その他インド政府の通知する者
なお、総売上(Aggregate Turnover)が1,500万ルピー等以下の事業者は簡易課税制度(Composition Scheme)の選択も可能です(CGST法第10条)。
総売上(Aggregate Turnover)とは
総売上(Aggregate Turnover)は、同一PANを持つ者におけるすべての課税供給(リバースチャージ方式で納税する仕入供給額を除く)、非課税供給(Exempt Supply)、物品・サービスの輸出、州間供給の総額であり、全インドベースで計算されるものの、GST額は除外して計算されると定義されています(CGST法第2条6項)。この総売上(Aggregate Turnover)は各種GSTコンプライアンスの適用有無の判断する際の基準になる事が多いため、重要な数値となります。
また、GST登録の必要性の有無を判断する場合の総売上(Aggregate Turnover)には、自らの勘定で供給のみならず他社の代理人として行うすべての供給を含めて考える必要があります(CGST法第22条説明書きi)。
GST登録の期限
GST登録が必要な者は、GST登録が必要なすべての州にてGST登録が必要になってから30日以内でのGST登録の申請が求められています(CGST法第25条1項)。一方で臨時納税者(Casual Taxable Person)又は非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)の場合は、事業をはじめる遅くとも5日前までにGST登録を申請する必要があります。また、GST登録の必要がない者も自主的にGST登録をすることはできますが、その場合にはすべてのGST法の規定への遵守が求められます(CGST法第25条3項)。
GST登録が必要になってから30日以内に申請した者は、GST登録が必要になった日からGST登録は有効とる一方で、30日以内に申請しなかった者はGST登録が完了した日からGST登録は有効となります(CGST法細則第10条2,3項)。
また、GST登録が完了するとGST当局よりGST番号(GST Identification Number - GSTIN)の記載されたGST登録証明書が発行されます。このGST登録完了まではGSTを課税して請求書を作成することも仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用することもできません。
GST登録の申請と承認
GST登録の申請は、GST REG-01という様式をGSTポータルから提出して行います。なお、IT知識に明るくない者のために用意されている物理的なGSTセンターにて、GST登録の申請を行うことも可能です。なお、GST登録はPANをベースに行うことになるため(CGST法第25条6項)、PANを取得していない者はまずはPANの取得から行う必要があります。また2020年以降、GST登録者にはAadhaar認証が求められるようになっており、Aadhaarが割り当てられていない者や例外となる者を除きGST新規登録申請者のみならず、GST登録を取り消す/還付申請を行う場合には既存のGST登録者にもAadhaar認証が求められます(CGST法第25条6A,6B,6C,6D項、CGST法細則第23条、第89条、第96条)。
GST申請が行われると申請情報がGST当局の担当官による確認作業が開始されます。担当官から申請内容に疑義を唱えられない場合で、かつ申請者のAadhaar認証が適切に完了すると登録申請から7営業日でGST登録が完了します(CGST法細則第9条1項)。ただ、Aadhaar認証を行ったものの、データ分析およびリスクパラメータに基づき個別に識別されてしまった申請者は、GSTセンターまで申請書類等の原本を持参のうえ、訪問し生体認証に基づくAadhaar認証及び写真撮影が必要となります(CGST法細則第8条4A項但し書きの1)また、そもそもAadhaar認証を選択しない申請者も、GSTセンターまで申請書類等の原本を持参のうえ、写真撮影が必要となります(CGST法細則第8条4A項但し書きの2)。2024年7月10日以降、インド全州でこのGSTセンターでの生体認証等が適用になり(Notification No. 13/2024 CT)、Aadhaar認証が適切に完了しない場合には、GST申請がとても煩雑となります。
一方で、担当官が申請内容に疑義を唱える場合には、申請から7営業日以内に担当官は詳細説枚や追加書類の開示を求めるため申請者に対して通知を発行します(CGST法細則第9条2項)。申請者がこの通知を受け取ってから7営業日以内に回答をしない場合や満足のいく回答が得られないと担当官が判断した場合には、担当官は本申請を却下することができます(CGST法細則第9条4項)。
GST登録が完了すると各GST登録者に割り当てられるGST番号(GST Identification Number - GSTIN)が記載されたGST登録証明書がGST REG-06という様式で発行されます(CGST法第25条11項、CGST法細則第10条)。GST番号の取得後はオフィスや店舗に掲示する必要がありますが、詳細はこちらでまとめています。
GST登録の変更
一度登録した内容に変更が生じた場合には、15日以内に変更申請を行う必要があります(CGST法第28条、CGST法細則第19条)。GST登録内容の変更の手続きは、変更する内容が主要分野(Core Fields)かその他の分野(Non-core Fields)によってそれぞれ規定されており、主要分野(Core Fields)の変更はGST当局の担当官の承認後に変更が完了する一方で、その他の分野(Non-core Fields)の変更の場合には自動で変更が承認されます。
- 主要分野(Core Fields):商号、住所、代表者等のステークホルダーの変更
- その他の分野(Non-core Fields):メールアドレス等の上記以外の変更
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |