インドでは全ての事業体に法定監査(Statutory Audit)と呼ばれる会計監査が義務付けられています。その他にもいくつかの監査が一定の売上などの要件を満たす場合、義務付けられています。概要は以下の通りです。
法定監査(Statutory Audit)
2013年インド会社法に基づき全ての事業体(駐在員事務所、支店、プロジェクト事務所を含む)が義務付けられている法定の監査です。売り上げの多寡に関わらず義務付けられており、日本とは大きく異なる制度の一つです。
監査済みの財務諸表及び監査報告書は、期末日(3月31日)から6ヶ月以内に開催される株主総会へ提出されなければならないため、法定監査の期限は9月30日になっています。尚、設立後初の年次株主総会に限り9ヶ月以内の開催が認められていますので、その場合の期限は12月31日になります。
税務監査(Tax Audit)
インド所得税法第44AB条に基づき年間売上高1000万ルピー超(緩和規定あり)の会社に義務付けられている監査です。所得税の観点から財務諸表の確認が行われます。税務監査の期限は法人税の確定申告書(Income Tax Return)の提出期限の1ヶ月前と設定されているため、関連当事者間での国際取引のない企業は9月30日、ある場合には10月30日が期限となります。詳細は「税務監査(Tax Audit)とは何でしょうか?」でもまとめております。
財務報告にかかわる内部統制の監査
2013年インド会社法では、財務報告にかかわる内部統制に関して、取締役(取締報告書)・監査人(監査報告書)に報告の義務を課しています。財務報告にかかる内部統制(Internal Control over Financial Reporting - ICFR)は上場・非上場の全ての会社について監査の対象となっています。その他、事業運営にかかる内部統制・不正の予防に関しては上場企業のみがその対象です。
GST監査(GST Audit)
GST監査(GST Audit)では納税者の行った月次や年次の申告内容が正しいか、備え置き書類が正しく保管されているかどうか等が確認されます。年間売上が2千万ルピーを超える納税者はGST年次申告(GSTR-9)を、5千万ルピーを超える納税者はGST年間調整表(GSTR-9C)を作成の上、申告する必要があります(CGST法第44条、CGST法細則第80条)。また、GST税務当局によるGST監査もあり詳細は「GST監査とはどのような監査でしょうか?」
もご参照ください。
会社秘書役監査(Secretarial Audit)
2013年インド会社法に基づいて、以下の会社は、会社秘書役監査が義務付けられています。会社秘書役監査では、会社法にかかるコンプライアンスを確認します。また、会社秘書役監査報告書は様式Form M-3.Rという様式で作成されます。
- 上場会社
- 払込資本金が5億ルピー以上 又は売り上げが25億ルピー以上の公開会社
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |