インドもロックダウン突入から1ヶ月が経ち、多くのビジネス活動が停滞しています。直近、資金繰りについてご相談を頂く機会も増えており、検討可能な手段をまとめました。各社個別の事情があり、全ての手段が検討可能ではないと思いますが、自社で活用可能な手段をご確認ください。
1. コスト削減
人件費・家賃等の固定費を削り全体の経費を圧縮します。人件費については、解雇等の措置が必要な場合には各種労働法規に基づいた適法な対応が必要となりますので、弁護士等の専門家を含め慎重な対応が必要です。
2. 売掛金の回収
既に一部企業ではロックダウン中の売掛金回収に遅延がみられます。支払期限前から支払いを確認すると共に、遅延した場合には速やかに督促します。また、数回督促しても前進が見られない場合にはマネージメントへの通告等が必要です。最終手段として売掛金を現金化するために、期日までの支払を条件に一定の割引を適用することも選択肢の一つになります。
3. 対外商業借入(External Commercial Borrowing - ECB)の活用
親会社、グループ会社からの対外商業借入(ECB)の活用を検討します。運転資金目的の場合、最低平均借入(償還)期間は5年間となります。ECBは融資実行前にインド準備銀行(RBI)から貸付登録番号(Loan Registration Number - LRN)を取得する必要があります。ロックダウン期間中、RBIの活動も極度に制限されていることから申請の受付窓口となるAD銀行との事前の連携が必要です。
4. リースの活用
固定資産取得による一括での手元現金の流出を防ぐため、リースを検討します。また、場合によっては手元の固定資産を一旦リース会社に売却し、再度リースしてもらうということも可能です。
5. 銀行借入の活用
邦銀・地場銀行から借入を行うもしくは、融資枠を確保し緊急の資金需要に備えます。借入契約実行の際のボトルネックは契約書の締結です。融資実行前に書面で契約を締結する必要があり、スタンプペーパーの手配なども含めて期日までに完了できるかを確認する必要があります。
6. 増資
既存株主からの増資は、ロックダウン状況下で最も機動的に実行可能な資金調達手段です。追加出資については既存株主の合意を得る必要はありますが、借入などと比較して実行までのて手続きをオンラインで完結することが可能なのがメリットの一つです。
7. 税金納付の先送り
通常、源泉徴収税(TDS)や物品・サービス税(GST)の納付遅延については、通常であれば年間18%の延滞利息が徴収されます。税務当局から緩和措置が発表されており、TDSは9%・GSTは9%又は条件により免除されています。通常の状況であれば、納税は速やかに行われるべきですが状況次第では納付を遅らせるということも検討可能です。
8. 各種支払の先送り
取引先と相談のうえ、買掛金や立替金の支払スケジュールを遅らせることが可能です。特に本社・グループ会社への支払については、相談の余地も大きいことから先方の資金状況に合わせて、支払を先送りすることが可能です。
9. 銀行借入返済のリスケジュール
既存の借入返済について、インド準備銀行(RBI)は2020年3月1日~5月31日迄の3か月間の期間をモラトリアム期間して設定し本期間の利息・元本支払を遅らせた場合にも、金融機関側の信用情報などは棄損されないとしました。制度上は信用は棄損されないこととなっていますが、金融機関の心証の悪化はさけられないため基本的には検討の可能性は極めて低い選択肢です。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |