マネーロンダリングを防止し、ブラックマネーを排除することを目的として現金取引を制限する条項が1961年インド所得税法(Income-Tax,1961)にはいくつか用意されています。現金取引を牽制し、取引記録がトレースできる銀行振込等の取引を推奨したいインド所得税当局の狙いが見て取れます。
現金取引に関連する損金不算入
銀行振出小切手、口座振出銀行為替手形、銀行口座経由の電子決済システム又はその他規定された電子的方法以外の方法で、1日あたりに 1 人に対して行われた支払い合計が 1万 ルピーを超える場合、その支出は損金として認められません(インド所得税法第40A条3項)。なお貨物自動車の運送、賃借、リースに対する支払いの場合、現金支払いの制限が1万ルピーから3万5千ルピーとなります(インド所得税法第40A条3A項但し書きの2)。
また、事業所得(Profits and gains of business or profession)の計算において、銀行振出小切手、口座振出銀行為替手形、銀行口座経由の電子決済システム又はその他規定された電子的方法以外の方法で、、1日あたりに1人に対して行われた支払い合計が 1万ルピーを超える資産取得のための支出額は、税務上の当該資産の取得原価に含めることはできません(インド所得税法第43条1項但し書きの2)。よって、その分の取得費は減価償却を通して損金算入することができなくなります。
現金取引を受領した者へのペナルティ
いかなる者も銀行振出小切手、口座振出銀行為替手形、銀行口座経由の電子決済システム又はその他規定された電子的方法以外の方法で、合計額2万ルピーを超える貸付金、預金、または特定の金額を受け取ることはできません(インド所得税法第269SS条)。ただ政府や銀行等から受け取る貸付金、預金、または特定の金額はこの規制の対象外です。この規制に反して、合計額2万ルピーを超える貸付金、預金、または特定の金額を受け取った者はその金額と同額のペナルティがインド税務当局から課せられることがあります(インド所得税法第271D条)。
また、いかなる者も銀行振出小切手、口座振出銀行為替手形、銀行口座経由の電子決済システム又はその他規定された電子的方法以外の方法で、以下に該当する金額は20万ルピーを超えて受け取ることはできません(インド所得税法第269ST条)。
- 1日あたりに1人からの受領額の合計額
- 1つの取引に関する額
- 1人から1つのイベントや機会に関連する取引に関する額
よって、結婚式で1人から20万ルピーを超えてご祝儀を現金で受けることはできません。この規制に反して、20万ルピーを超える金額を受け取った者はその金額と同額のペナルティがインド税務当局から課せられることがあります(インド所得税法第271D条)。ただ、当違反に正当かつ十分な理由があったことを証明できればペナルティは課せられません。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |