インド国内にインド子会社が2社あり、一方のインド子会社Aに資金余剰がある一方で他方のインド子会社Bに資金的余裕がない場合には、インド国内でインド子会社Aからインド子会社Bへ貸付を行うことがあります。このような一定のグループ会社間の貸付はみなし配当課税として、株主が課税される可能性があります。
インド所得税法上でのみなし配当
インド所得税法第2条22項が配当(Dividend)の定義をしておりますが、(e)号ではある会社(上場企業を除く)が当会社の10%以上の議決権を持つ実質の株主に対して支払う前金や貸付や、当会社の株主が実質の株主となっているその他の会社に支払う前金や貸付は、当会社の累積利益の範囲までは配当に含むと規定しています。
インド所得税では配当課税を受けるのは貸付/前金を受け取る会社なのか株主なのかは規定されていないものの、株主が配当課税を受ける旨のいくつかの裁判判決が出ております(Commissioner of Income-tax v. Standipack (P.) Ltd. や Apeejay Surrendra Management Services (P.) Ltd. v. Deputy Commissioner of Income-tax)。下記の図表の例で考えてみましょう。
上記の例ではA社(非上場企業と仮定)から他の子会社であるB社への貸付や前金は、A社の累積利益までの範囲において、X社で配当課税されることになります。ただ当貸付が商取引で行われる場合(貸付契約に基づき貸付利息が発生し、返済が求められる等)は、みなし配当とはならないとする見解が最高裁判所で示されており、課税性の判断は慎重に行う必要があります。
万が一、A社からB社への貸付がみなし配当に該当する場合は、X社での配当課税に係る法人税率は日印租税条約第10条に基づき10%、租税条約が適用できない場合はインド所得税法第115A条に基づいて20%(+加算税、健康教育目的税)となります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |