GSTR-9やGSTR-9CのRは”Return”を指し、”Return”とは納税申告書を意味し、税務申告はFiling of Returnsと呼ばれますが税務申告はGSTのコンプライアンスの根幹をなし、最も重要なコンプライアンス手続きと言えます。GSTは申告納税方式(Self-Assessment)の税金であり、GST登録者の行った各税務申告の内容に基づいて、GST当局はGST登録者の経済活動や納税額を把握できるようになるためです。逆に言えば、適切に税務申告が行われていない場合は、税務調査の対象になり結果として更正処分を受けてしまうことになりかねません。
GSTR-9とは
様式GSTR-9とは、物品・サービス供給を行うすべてのGST登録者が翌年の12月31日までにGSTポータルから電子申告する必要のあるGST年次申告書です(CGST法第44条、CGST法細則第80条1項)。売上供給(Outward Supply)、仕入れ(Inward Supply)、仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)等の詳細をCGST/SGST/IGSTの区分ごとに申告しますが、月次申告GSTR-1やGSTR-3Bの統合版概要書と考えると分かりやすいかと思います。
なお、下記のGST登録者はGSTR-9の申告は求められていません(CGST法第44条、Notification No.30/2019 –Central Tax)。
- Input Service Distributor(CGST法第2条61項参照)
- 非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)(CGST法第2条77項参照)
- 臨時納税者(Casual Taxable Person)(CGST法第2条20項参照)
- TDS徴収義務者(CGST法第51項参照)
- TCS徴収義務者(CGST法第52 項参照)
- インド国外のオンライン情報データアクセス・読み込み(Online Information Data Base Access and Retrieval - OIDAR)サービス提供者(IGST法第14条参照)
なお、インド政府は上記以外のGST登録者であってもGSTR-9の申告が不要となる者を税務通知で通知することができます。総売上(Aggregate Turnover)が2千万ルピーまでのGST登録者のGSTR-9申告は任意である旨の通達がFY2023-24までは毎年出されています。よって、基本的にGSTR-9の申告が求められるGST登録者は総売上(Aggregate Turnover)が2千万ルピー以上の者です。またGST登録をおこなっている各州ごとにGSTR-9の申告が求められることに注意が必要です。
GSTR-9Cとは
様式GSTR-9Cとは、総売上(Aggregate Turnover)が5千万ルピー以上の物品・サービス供給を行うすべてのGST登録者が翌年の12月31日までにGSTポータルから電子申告する必要のあるGST年間調整申告です(CGST法第44条、CGST法細則第80条3項)。GSTR-9Cでは、GST登録者自らが年度中に申告した供給額と監査済財務諸表の突合を行います。なお、FY2020-21まではGSTR-9Cの申告にはインド勅許会計士の証明書も求められていましたが、2021年度財政法でインド勅許会計士の証明書の添付は不要となる旨の改正がありました。
また、総売上(Aggregate Turnover)が5千万ルピー以上であっても、下記のGST登録者にはGSTR-9Cの申告は求められていません(CGST法第44条、Notification No.30/2019 –Central Tax)。
- Input Service Distributor(CGST法第2条61項参照)
- 非居住納税者(Non-Resident Taxable Person)(CGST法第2条77項参照)
- 臨時納税者(Casual Taxable Person)(CGST法第2条20項参照)
- TDS徴収義務者(CGST法第51項参照)
- TCS徴収義務者(CGST法第52 項参照)
- オンライン情報データアクセス・読み込み(Online Information Data Base Access and Retrieval - OIDAR)サービス提供者(IGST法第14条参照)
なお、GST登録をおこなっている各州ごとにGSTR-9Cの申告が求められることに注意が必要です。
GSTR-9/9C申告の遅延に関する遅延金
GSTR-9/9Cの申告が遅延する場合には以下の遅延金(Late Fee)が日単位で課されます(CGST法第47条2項、No. 7/2023 – Central Tax)。
年間総売上が5,000万ルピー以下の場合(FY2022-23以降)
遅延金/日 |
最大遅延金額 |
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CGST法 | 25ルピー | 当該州の売上の0.02% |
各州SGST法 | 25ルピー | 当該州の売上の0.02% |
合計 | 50ルピー | 当該州の売上の0.04% |
年間総売上が5,000万ルピー超、2億ルピー以下の場合(FY2022-23以降)
遅延金/日 |
最大遅延金額 |
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CGST法 | 50ルピー | 当該州の売上の0.02% |
各州SGST法 | 50ルピー | 当該州の売上の0.02% |
合計 | 100ルピー | 当該州の売上の0.04% |
年間総売上が2億ルピー超の場合
遅延金/日 |
最大遅延金額 |
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CGST法 | 100ルピー | 当該州の売上の0.25% |
各州SGST法 | 100ルピー | 当該州の売上の0.25% |
合計 | 200ルピー | 当該州の売上の0.5% |
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |