効率的にGSTシステムを運用していくためにも、GST法にはGSTコンプライアンスを適切に遵守していない納税者に対してペナルティ(Penalty)を課す規定が存在します。課せられるペナルティの多寡は、納税者のGST法違反の軽度や意図の有無で異なります。なお、ペナルティは延滞利息(Interest)とは異なり、多くのGSTコンプライアンス違反に対しては、延滞利息とペナルティが別々で課せられることがあります。
一定のGST法違反に関するペナルティ
CGST法第122条1項の規定する下記21つの一定のGST法違反を行った納税者には、脱税額等の相当額又は20,000ルピー(=CGST10,000ルピー+SGST10,000ルピー / IGST20,000ルピー)のいずれか高い方がペナルティとして課せられます。
請求書に関する違反
- 請求書を発行せず、物品・サービス供給を行う場合や不正確、虚偽の請求書を発行する場合(i)
- 物品・サービス供給を行わずに、請求書等を発行する場合(ii)
- 他のGST登録者のGST番号を利用して請求書等を発行する場合(xix)
脱税に関する違反
- GSTを徴収したにも関わらず、納税期日から3か月を超えて納税しない場合(iii)
- GST法に違反してGSTを徴収したにも関わらず、納税期日から3か月を超えて納税しない場合(iv)
- CGST法第51条の定めるTDSを源泉徴収しない場合、源泉徴収額が不足している場合や、源泉徴収したものの納税しない場合(v)
- CGST法第52条の定めるTCSを源泉徴収しない場合、源泉徴収額が不足している場合や、源泉徴収したものの納税しない場合(vi)
- 脱税に繋がる売上額の隠蔽を行う場合(xv)
仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)に関する違反
- 実際の物品・サービス供給を受領せずに仕入税額控除を使用する場合(vii)
- CGST法20条に違反して仮払GST(Input GST)を配賦する場合(ix)
還付に関する違反
- 不正に還付を受ける場合(viii)
記録、文書、会計帳簿に関する違反
- 納税を免れる意図で、会計記録の改ざんやすり替え、虚偽の口座や書類作成、虚偽の情報や申告書を提出する場合(x)
- 適切に会計帳簿を保管していない場合(xvi)
- GST当局の担当官の要請に応じて情報や文書を提出できない場合や虚偽の情報や文書を提出する場合(xvii)
GST登録に関する違反
- GST登録義務があるにも関わらずGST登録をしない場合(xi)
- GST登録時に虚偽の情報を提出した場合(xii)
運搬や保管に関する違反
- 必要書類を備えずに課税物品を運搬する場合(xiv)
- 押収されるおそれがあると信じるに足りる理由がある物品を供給、運搬、保管する場合(xviii)
その他の違反
- GST当局の担当官の職務の遂行を妨害又は妨げる場合(xiii)
- 証拠や文書を改ざん、破棄する場合(xx)
- 留置、押収、差押えられた物品を処分する又は手を加える場合(xxi)
なお、実際の納税者以外にも実質的な脱税の利益の恩恵を受ける者や一定のEコマース事業者(Electronic Commerce Operator - ECO)もペナルティの対象となります(CGST法第122条1A,1B項)。さらに上記の21のGST法違反をほう助する者、押収対象であることが明らかな物品を保有等する者、GST法違反であることが明らかなサービス供給を受ける者、召喚状(Summon)に応じない者、請求書を会計帳簿に記帳しない者にも50,000ルピー(=CGST25,000ルピー+SGST25,000ルピー / IGST50,000ルピー)のペナルティが課せられます(CGST法第122条3項)。
また、GST登録者には下記の場合には下記表のペナルティが課せられます(CGST法第122条2項)。
- 物品・サービス供給を行い納税額が不足している場合や納税していない場合
- 仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を誤って利用する場合
不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽以外の理由に基づいた脱税の場合 | 脱税額の10%又は20,000ルピー(=CGST10,000ルピー+SGST10,000ルピー / IGST20,000ルピー)のいずれか高い方 |
不正行為または故意の虚偽記載や隠蔽の理由に基づいた脱税の場合 | 脱税額の10%又は20,000ルピー(=CGST10,000ルピー+SGST10,000ルピー / IGST20,000ルピー)のいずれか高い方 |
上記以外のGST法違反に関するペナルティ
上記で明記された一定のGST法違反以外のGST法違反を行った者に対しては、ペナルティの一般条項であるCGST法第125条に基づいて、上限50,000ルピー(=CGST25,000ルピー+SGST25,000ルピー / IGST50,000ルピー)のペナルティが課せられます。脱税額が5,000ルピー以内の少額の一定のGST法違反や容易に修正可能な書類の誤記載等であれば、ペナルティは課せられません(CGST法第126条1項)。
GST法のペナルティはGST法違反の種類や重大度に応じてペナルティ額は決定され、何人に対しても、聴聞の機会を与えずにペナルティを課すことはできません。(CGST法第126条2項,3項)。ペナルティを課す場合、GST当局の担当官はペナルティ対象となったGST法違反の内容を明記する必要があり、担当官の指摘の前にGST法違反を自発的に申し出た者には、担当官はペナルティ額を決定する際にこの事実をペナルティの軽減要素として考慮することができます(CGST法第126条2項,3項)。ただ、このCGST法第126条の規定は上記のペナルティ額が固定額や固定パーセンテージで課せられるGST法違反には適用となりません(CGST法第126条6項)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |