誠実な納税者の利益を守るため、GST当局のGST徴収を執行する一連の手続きの中の予防手段として、GST法には査察(Inspection)、捜査(Search)、押収(Seizure)及び逮捕(Arrest)に関する規定が存在します。これらの規定は脱税への抑止力としても効果もあり、インド政府の税収の歳入を保護するための最終手段として機能します。
査察(Inspection)
GST当局の担当官(ジョイントコミッショナー以上の職位)が納税者に下記を行っていると信じうるに足る理由がある場合、GST当局の職員にその納税者、物品運送業者、倉庫所有者の事業の場所を査察させる権限を与えることができます(CGST法第67条1項)。
- 納税者が物品・サービス供給を隠蔽している、在庫を隠蔽している、利用可能額以上の仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を利用している、脱税目的でGST法違反をしている
- 物品運送業に従事する者や倉庫所有者が、納税を免れた物品を保管している又は脱税させるような方法で会計帳簿や物品を保管している
また、5万ルピー超の物品を輸送する者は、電子貨物運送状(E-Way Bill)を携帯する必要がありますが、GST当局の担当官は輸送中の物品やE-way billを査察することができます(CGST法第68条)。この査察にはジョイントコミッショナー以上の職位の担当官からの権限付与は求められません。
さらに、GST当局の担当官(ジョイントコミッショナー以上の職位)に権限を与えられたGST当局の職員は、インド政府の税収の歳入を保護するために必要なGST監査、GST税務調査、検証、確認のために、GST登録者のいかなる事業の場所に立ち入ることができ、会計帳簿、文書、コンピューター、コンピュータープログラム、コンピューターソフトウェア、その他必要な対象を査察することができます(CGST法第71条1項)。事業の場所の担当者はGST当局の要請に応じて、15日以内に会計帳簿等を提出する必要があります(CGST法第71条2項)。
捜査(Search)及び押収(Seizure)
上述の査察等の結果として、GST当局の担当官(ジョイントコミッショナー以上の職位)が納税者はGST法の執行手続きに有用である没収(Confiscation)の対象となる物品、文書、会計帳簿を隠していると信じうるに足る理由がある場合、GST当局の職員又は自らに当該物品、文書、会計帳簿等を捜査、押収させる権限を与えることができます(CGST法第67条2項)。
ただし、押収した物品、文書、会計帳簿は、GST法の調査(Examination)やその他の執行手続きに必要な期間の間にわたってGST当局の担当官で保管されます。また文書、会計帳簿等で税務通知の発行に依拠しないものは、30日以内に納税者に返却されなければいけません(CGST法第67条3項)。
なお、物品の没収(Confiscation)については、CGST法第130条が規定しています。
逮捕(Arrest)
GST当局の担当官(コミッショナーの職位)が、納税者は下記の(i)又は(ii)に該当するGST法違反を犯していると信じうるに足る理由がある場合、GST当局の職員に当該人物を逮捕する権限を与えることができます(CGST法第69条1項)。
(i)下記を行い脱税額等が2,000万ルピーを超えるケース
- 脱税する意図をもって請求書を発行せず、物品・サービス供給を行う場合
- 結果として仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)を不正に使用する又は還付を受けることにつながる、物品・サービス供給を行わずに、請求書等を発行した場合
- 上記の請求書等を用いて不正に仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)使用する又は請求書等を無しに不正に仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)使用する場合
- GSTを徴収したにも関わらず、納税期日から3か月を超えて納税しない場合
(ii)有罪判決を受けた後に再販で有罪判決を受けるケース
なお、上記等のGST法違反を行い脱税額等が5,000万ルピーを超える場合には5年未満の懲役と罰金、脱税額等が2,000万ルピーを超え5,000万ルピー未満の場合には3年未満の懲役と罰金が課せられます(CGST法第132条1項)。
協力要請
警察、鉄道、税関の全役員、及び村役人、州税吏、連邦直轄領税吏を含む土地収入の徴収に従事する役員は、GST当局の担当官に協力しなければなりません(CGST法第72条)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |