インドで会社設立する際に資本金の金額を決定する必要がありますが、決定方法についてよく質問を受けることがあります。資本金金額決定の際に考慮すべきポイントを以下の通りまとめました。
資本金の使途とは?
対外商業借入(External Commercial Borrowing - ECB)などで資金を調達した場合、規制に基づき申請時の資金使途に基づいた目的で資金を使用しなければなりません。一方で資本金についてはマネージメントの採用で自由に事業の目的に使用することが可能なため最も資金使途が自由な資金と言えます。
運転資金の観点
会社設立時の運転資金は、初期の設立関連費用+3~6ヵ月分の運転資金を見込んで設定するのが一般的と言われています。仕入れや設備投資の時期、また仕入れ先が親会社やグループ会社からで一定程度の支払猶予が認められるかなどのその他の点も踏まえて決定します。実務的には増資に際してはインド側のコンプライアス手続きに一定程度の時間とコストがかかるため、こまめに増資するのはあまりお勧めできず一定期間の運転資金に十分な金額を見込んで資本金金額を決定することを推奨しています。
会社法コンプライアンスの観点
日本では一定の資本金金額以上の場合、大企業とみなされ税法上の取り扱いが異なりますが、インドでも資本金金額の多寡により会社法で求められるコンプライアンスが異なります。
- 払込資本金が5千万ルピーを超える場合
XBRL形式での財務諸表作成及び提出が求められます。 - 払込資本金が1億ルピーを超える場合
常勤の会社秘書役を雇用する義務が発生します。
許認可の観点
業種によっては、許認可の取得要件の一つに資本金額があるものがあります。事業計画の段階で自社の事業に必要な許認可を確認する際に、合わせて資本金金額の要件が存在するか確認をする必要があります。要件が存在する場合には、その充足のため要件を充たす金額以上の資本金を設定する必要があります。
インド会社設立時の資本金の払込み方法
インドでの会社設立時の資本金は、増資の上限枠である授権資本金と実際に払込む金額である払込資本金の2種類があります。設立登記時に支払う登記関連手数料(主に印紙税)は、授権資本金の金額を基準に決定されますのであまりに不必要に大きな授権資本金額を設定することは、同時に不必要な印紙税を支払わなければならずあまりお勧めできません。
インド会社設立後、60日以内に資本金を送金する必要があるため、速やかに銀行口座を開設し資本金の送金を株主から行います。
手元に現金がない場合にどうしたらよいか?
インドでの会社設立時には資本金は現金で拠出するのが最も一般的ですが、インドパートナー企業との合弁設立などの場合には、状況によって現金の代わりに土地・工場・設備機械・技術ライセンス等などの現物で出資する場合があります。
資本金は増額できるのか?
資本金は、後日資金需要に応じて増額(増資)することが可能です。授権資本金の引き上げを伴う場合と、授権資本金額の枠内での増資の2種類に分かれます。授権資本金額内での増資は、通常取締役会決議のみで実行することが可能ですが、授権資本金額を引き上げる場合には株主総会での特別決議を必要とするため実行に一定の時間を要します。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |