インドの証券取引所にて株式取引を行う際には、Demat口座の開設が必要となります。Demat口座では電子化された株券を保有することが可能です。株券の電子化やDemat口座についてはインド証券取引委員会(Security Exchange Board of India - SEBI)が規定しています。
基本的に非上場企業の株券は物理的な紙の株券(Form SH-1)で管理されており、紛失のリスクや偽造のリスクが伴うため、インドでは全ての株券を電子化する流れにあるものの、まだ実現はされておりません。
Demat口座を使用することで株式の保有及び譲渡を簡便に行えるだけでなく、株式発行会社からの配当金もDemat口座で受領可能です。またDemat口座を介しての株式譲渡の場合には印紙税がかからないなどのメリットがあります。
株式の電子化が必要なインド企業
インド会社法が株式の電子化を求めている企業は下記の通りです。
- 上場公開会社:全株式電子化が必要
- 非上場公開会社:2013年インド会社法第2条(85)項で定められた、小規模会社(Small Company)に該当しない会社は2024年9月30日までに電子化が必要
なお、非上場公開株式という概念は日本では一般的ではないかと思いますが、
また、小規模会社(Small Company)の定義は以下の通りですが、持株会社(Holding Company)または子会社(Subsidiary Company)は小規模会社の定義から除外されています。
- 払込資本金が4,000万ルピー以下であること かつ
- 直近の監査済み財務諸表による年間売上金額が4億ルピー以下であること
※本件における基準日は2023年3月31日付となります。
よってインド子会社の株式を保有または取得する日本企業はDemat口座の開設が必要になります。
株式電子化までの流れ
【インド企業側】
①RTA (Register Transfer Agent)の選任
②インドの中央証券保管所であるNSDL(National Securities Depository Limited)/CDSL(Central Depository Service Limited)のいずれかまたはその両方で株式を電子化するか決定
③②で選択した中央証券保管所でISIN(International Securities Identification Number)の取得
【株主側】
④Demat口座開設
⑤現物の株券がある場合は、当株券を電子化
インド企業側の手続きと株主側の手続きは同時並行で進めることが可能ですが、④のDemat口座開設時には②で選択した中央証券保管所と同一の保管所でDemat口座を開設する必要があります。
一般的には①~③の所要期間は2~3ヶ月、④~⑤は3~4ヶ月の時間を要します。
中央証券保管所の機能
上述の2種類の中央証券保管所であるNSDL及びCDSLは、電子化された各種証券の保管及び株式市場での譲渡手続きに関する決済を完了させる機能を有しています。各株主は中央証券保管所と直接取引することは不可能であるため、Depository Participants - DPsと呼ばれる銀行、証券会社等の金融機関でDemat口座を開設し取引を行う必要があります。金融機関で取引用のDemat口座を開設した株主は、同口座を通じて資金決済並びに電子化された株式の売買が可能となります。中央証券保管所は取引用のDemat口座と随時連携を行いながら株式の取引情報を記録していきます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |