インドで会社設立する際にに決めなくてはならない必須事項のひとつで、会社登記局(Registrar of Companies - ROC)へ登記されます。日本では「本店所在地」とも呼ばれ、各種申請登記の際に参照され、各種当局の所轄を決定する際にも利用されます。
当局の査察や各種通知等の郵便物送付先になる場合もあるので、現実的に対応可能な住所を指定する必要があります。また、登記住所は変更可能ですが州を越えての変更は手続きが煩雑で非常に時間がかかるので、その点も留意が必要です。
なお、「登記住所」は必ずしも「実際に営業する場所」でなくても問題ありません。
自宅住居の賃貸物件で登記可能か?
インドでは各エリアによりゾーニングされており、活動可能な内容が事前に規制されている場合が多くなっています。特に住宅地では、居住以外の目的で住居を使用することが可能なのは一般的には弁護士・医師などの専門家等が自宅で開業する場合などに限られています。よって、まずは大家等に登記が可能であることを確認する必要があります。また、賃貸契約でも居住目的以外での使用を認めていない場合も多く、大家と契約締結時に合わせて確認・交渉をする必要があります。
インドの会社設立前に賃貸事務所を借りるか、登記が先か?
賃貸契約を締結する前提として、契約の主体となる法人が必要となります。よって、手続きの流れとしてはまずは法人設立登記を行い、その後登記された法人の名義で賃貸契約を締結することになります。
法人設立登記の際には登記住所の詳細を記載する場合と、設立する州のみを記載して登記する場合の2通りの方法があります。予めオーナーと賃貸契約の下交渉を行い住所が決定している場合には、登記に必要な書類をオーナーに準備してもらい同住所を登記に使用します。
その他の住所で登記する方法
登記にかかる問題を回避する方法として、コワーキングスペース、バーチャルオフィスやシェアオフィスを活用することも選択肢のひとつです。
コワーキングスペース、バーチャルオフィス、シェアオフィスにはさまざまな種類、条件のものがありますが、「住所利用と登記、郵便物の受け取り」といった、最低限のサービスを受けられるものなら月額数千ルピー円程度で賃貸事務所より安く借りられる可能性があります(エリア、物件、付加サービスなどによります)。
インドで初めて事業を開始する際に、賃貸事務所オーナーと交渉を行い入居準備を行うのは、それなりに時間と労力がかかります。速やかに活動拠点を設立するにはコワーキングスペース、バーチャルオフィス、シェアオフィスは有効な選択肢の一つです。
なお、法人設立登記には以下の書類が必要となります。登記予定の物件から以下の書類一式が提供してもらえるかは契約締結前に必ず確認が必要です。
- 賃貸契約書又はサービス契約書
- 直近2ヶ月以内の電気料金明細
- 取締役会決議形式の登記住所使用に関する異議なし証明(No Objection Certificate - NOC)
登記住所の変更は可能か?
会社設立時に登記した住所は、必要に応じて変更が可能です。登記住所の変更はForm INC-22と呼ばれる様式をROCへ提出して申請します。同一州内の変更はそれほど時間がかかりませんが、州を越えた変更には数か月の時間を要しますので注意が必要です。また、登記住所変更後は、紐づいている各種登録(GST、PAN、TAN、その他法定登録)の変更を行う必要があるのでご注意ください。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |