2022年2月1日にインド財務大臣より発表された2022年度国家予算案で、所得税の確定申告に関する従来の申告書に加え、更新申告書(Updated Return)と呼ばれる新しい種類の申告書が追加されました。一定の条件を満たす場合には当申告書を利用することで納税者は、申告済みの確定申告の修正が2年間に渡って可能となります。
2022年度以前の所得税申告書の種類
所得税申告書の種類 |
概要 |
期日 |
規定条文 |
1)所得税申告書 (Original Return) |
本来の所得税申告書 |
翌会計年度の10/31 ※国外関連者と取引がある場合は11/31 |
139条1項 |
2)遅延申告書 (Belated Return) |
1)を期日内に提出しなかった場合の申告に使用する所得税申告書 |
翌会計年度の12/31(翌会計年度末の3か月前)又は税務調査の完了のいずれか早いほう |
139条4項
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3)修正申告書 (Revised Return) |
1)もしくは2)に修正が必要な箇所が見つかった場合の申告に使用する所得税申告書 |
翌会計年度の12/31(翌会計年度末の3か月前)又は税務調査の完了のいずれか早いほう |
139条5項 |
上記の2)の申告書を提出する場合、ペナルティとして5,000ルピーの罰金が科されます。ただし、納税者の所得が50万ルピーを超えない場合は、罰金は1,000ルピーを超えないとされています(所得税法第234F条)。
新たに追加される更新申告書(Updated Return)
申告書の種類 |
概要 |
期日 |
規定条文 |
4)更新申告書 (Updated Return)
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過年度の所得額の修正をする場合の申告に使用する所得税申告書 ・翌会計士年度末から1年以内に申告した場合:25%の追加税額 ・翌会計士年度末から1年超2年以内の場合:50%の追加税額 |
翌会計年度末から24か月が経過するまで |
139条8A 140B条 |
なお、下記のような場合等には更新申告はできません。
- 過大に申告された所得を減額する修正する場合
- 還付金が発生又は増加する場合
- 同会計年度に関して税務調査、再調査、再計算、所得の修正が保留又は完了している場合
この更新申告書(Updated Return)にて2年間の自主的な修正を認めることで、税務当局にとっては脱税の抑制ひいては税務調査件数、その後の訴訟の件数の減少に対して期待できると言えます。
申告書の遅延提出の容認申請
インド所得税法第119条2項b号は、納税者の困難を回避することが望ましいと考えられる場合にインド所得税当局の担当官に所得税申告書の期日後に納税者が申請する税額控除や還付等に関する申請を容認する権限を与えています。上述の通り、インドの所得税の修正申告(Revised Return)の期日は翌会計年度の12/31(翌会計年度末の3か月前)と極めて短く、かつ更新申告書(Updated Return)も追加の還付金請求には利用できません。よって、修正申告(Revised Return)の期日後に追加で還付請求をする場合には、インド所得税法第119条2項b号に基づいて個々に容認申請をインド所得税当局に提出する必要があります。
直接税中央委員会(Central Board of Direct Taxes - CBDT)は2024年10月1日付で通達(Circular No. 11 /2024)を発して、還付請求や繰越欠損金の認識及び相殺に係るこの申告書の遅延提出の容認申請(Applications for condonation of delay in filing the Income tax returns)に関して明確化しました。2024年10月1日以降、納税者は会計年度末から6年以内であれば、この容認申請を提出することができるとし、インド所得税当局はできる限り提出があってから6か月以内に処理するよう求められています。この通達にて、インド所得税法第119条2項b号に関する容認申請の手続きに一定の明確化が与えられ、迅速的な対応が期待できるようになりました。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |