インドには、日本の国民皆保険のような全国民が対象となる健康保険制度はありませんが、労働者や公務員など、特定の国民に限定された保険制度が存在します。従業員国家保険(Employees’ State Insurance - ESI)は、病気、妊娠、けがなどによる所得の減少や喪失といった不測の事態の際の、低賃金労働者への補償を目的とした社会保険制度です。従業員国家保険基金への積み立てとして、雇用者と従業員がそれぞれ特定の割合で拠出する仕組みとなっています。労働者本人だけでなく、その扶養家族(配偶者や子供)に対しても医療保障が提供されます。
なお、ESIは、従来 Employees’ State Insurance Act, 1948 に基づき運用されてきた社会保険制度ですが、2025年11月21日に施行された2020年社会保障法(Code on Social Security, 2020) により、社会保障制度の一部として再編されています。
ESIコンプライアンスが適用となる企業とその従業員
ESIコンプライアンスの適用を受けるのは、工場、ホテル、レストラン、映画館、オフィスなど、従業員数が10人以上の事業所です。また、一度適用企業となった後は、たとえ従業員数が基準を下回ったとしても、対象従業員に対して継続して制度が適用されます。
月給21,000ルピー以下の従業員がESIの保険加入の対象者となります。企業は該当する従業員をESICポータルにて登録し、保険番号を取得させる必要があります。
また、企業は従業員国家保険公社(Employees’ State Insurance Corporation - ESIC)への登録が求められますが、2020年2月23日以降登記される企業は、インド企業省(Ministry of Corporate Affairs - MCA)への設立登記時に自動的に登録されることとなっており、特段別途の手続きは必要ありません。ただし、ESICに登録されていた場合であっても、従業員数の基準を満たさない事業所にはESIのコンプライアンスは適用されません。
なお、従業員数が10人以上の事業所の場合でも、保険加入の対象に該当する従業員がいなければ、支払い義務は生じません。ただし、ESIC ポータルを通じてNil Returnを行う必要があります。
ESIへの拠出額
従業員と雇用者の双方がESIC基金に拠出する義務があります。月次の拠出額は、従業員が0.75%、雇用者が3.25%となっており、月給21,000ルピー以下の従業員が対象です。支払期限は翌月の15日までです。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


