インドで税務上の居住ステータスが「通常の居住者(ROR)」に該当する者は、全世界所得課税としてインド国外所得がインドで課税対象となるだけでなく、インド国外に保有する資産についても所得税申告書で開示する必要があります。この義務を怠った者は、インド所得税法のみならず、2015年ブラックマネー法(Black Money (Undisclosed Foreign Income and Assets) and Imposition of Tax Act, 2015)に基づいて多額のペナルティが課せられる可能性があります。
OECDが主導する世界各国の税務当局が参加する共通報告基準(CRS)に基づく国際自動情報交換制度(AEOI)により、インド国外の所得や資産であっても、インド税務当局は把握することがあります。
インド国外資産の開示義務
「通常の居住者(ROR)」に該当する納税者は、所得税申告書内の「Schedule FA」という欄にて、インド国外資産を報告します。インドの個人所得税の課税年度は4月~翌3月ですが、インド国外資産の開示対象は1月~12月である点に注意が必要です。一部の資産については、1月~12月中の期末残高(Closing Balance)および期中最高残高(Peak Balance)の開示欄が「Schedule FA」にはあります。
「Schedule FA」では、資産の種類ごとに以下の通りテーブルが細分化されています。
- Table A1(国外預金口座): インド国外の銀行等で保有している預金口座。
- Table A2(国外管理口座): インド国外の証券会社等の保管口座。例)持株会の持ち分の証券口座
- Table A3(国外株式および債券): インド国外法人の株式、社債、投資信託等。
- Table A4(国外保険積立、年金契約):インド国外の貯蓄型保険等。 例)日本の生命保険や学資保険。
- Table B(インド国外企業に対する経済的な利害関係):インド国外のLLP(有限責任事業組合)等への出資、パートナーシップ権。
- Table C(インド国外の不動産): インド国外に所有する土地、一戸建て、コンドミニアム等。
- Table D(その他のインド国外資本資産): 金塊、自家用車等。
- Table E(自身が署名権限を有する口座): 自分名義ではないが、署名権(Authorized Signatory)のみを持っている国外口座。例:日本法人の法人口座
- Table F(自身が受託者又は受益者であるインド国外の信託): インド国外信託の受益権等
- Table G(上記以外のインド国外資産から得られた所得): Table A~Fで開示した資産以外から得られた所得
なお、インド市民でない個人で、当人が「非居住者」であった期間に取得した資産で、かつ当該資産から課税年度に所得が発生していない場合には、当該資産の開示は任意となります(Schedule FA内のNote)。
ブラックマネー法のペナルティ規定
未開示資産や未申告所得への課税およびペナルティ
海外資産の存在を隠蔽し、かつその購入原資の出所をインド税務当局に合理的に説明できない場合、その資産の公正市場価値に対して30%の所得税が課されます。また、未申告の国外所得に対しても30%の所得税が課されます(ブラックマネー法第3条第1項)。
さらに、この税額の3倍(資産価値の90%に相当)がペナルティとして科せられます(ブラックマネー法第41条第1項)。
所得税申告書での不開示・誤記載への定額ペナルティ
所得税申告書を提出したものの、Schedule FAに国外資産を記載しなかった、または誤った内容を記載した場合、違反した課税年度ごとに100万ルピーのペナルティが科せられることがあります(ブラックマネー法第43条)。また、国外資産があるにもかかわらず、期限内に所得税申告書自体を提出しなかった場合も、同様に年度ごと100万ルピーのペナルティが科せられることがあります。(ブラックマネー法第42条)。
刑事罰(禁錮刑および罰金)
所得税申告書において意図的に国外資産、国外所得に関する情報を開示しなかった場合、6ヶ月以上7年以下の厳格な禁錮刑および罰金の対象となります(ブラックマネー法第50条)。また、意図的な脱税・隠蔽行為を行った場合は3年以上10年以下の厳格な禁錮刑および罰金に処されます(ブラックマネー法第51条第1項)。なお、意図的に所得申告書を提出しなかった場合も、6ヶ月以上7年以下の厳格な禁錮刑および罰金となります(ブラックマネー法第49条)。
ペナルティの免除枠
不動産を除く国外資産の合計価額が200万ルピー以下である場合は、100万ルピーの定額ペナルティの対象から除外されます(ブラックマネー法第42条、第43条)。このペナルティの免除枠は2024年財政法で、従前は主に国外銀行口座の合計残高50万ルピー以下に限られていた例外が、不動産を除く国外資産の合計価額200万ルピー以下へ拡大されました。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


