従来の制度(2024年9月までの取り扱い)
株主への資金還流の方法の一つとして、自社株買い(Buy Back of Shares)があります。本取引のうち、非上場会社の自社株買い取引から生じる所得に対しては、インド所得税法第115QA条で定められた株式買戻税(Buy Back Tax - BBT)と言われる法人税の一種が課せられます。本税は株主は非課税で(インド所得税法第10条34A項)、買戻しを行う会社側で20%(加算税・健康教育目的税が別途課せられます。)の料率で課税されます。
2024年10月以降の取り扱い
BBTは2024年10月以降は廃止となり、買戻しを行う会社側ではなく、株主側でみなし配当として課税されます(インド所得税法第2条22項f号、第194条、インド所得税法第10条34A項但し書き)。これは、別の株主への資金還流方法である配当と課税関係の整合を取る形で法改正となります。
また、自社株買いをみなし配当としてその他の所得として課税所得を計算する際に、関連費用の損金算出が認められておりません(インド所得税法第57条但し書きの2)。つまり、株主の課税所得計算では、自社株対象の株式に関する取得費は損金不算入となります。ただ、自社株対象の株式に関する取得費はキャピタルロスの繰越欠損金として8年以内に将来の所得と相殺することになります(インド所得税法第46A条但し書き)。なお、その他の所得は総合課税されるため、税率はその納税者に適用になる法人税率又は個人所得税率です。
【事例】
- A社発行の株式を2020年に100株を@40で購入
- 2024年11月に20株をA社に@60で売却(自己株買い)
- 2025年5月に50株を別の個人に@70で売却
2020年の株式購入 | 取得費:4,000(=100×@40) |
2024年11月の自己株買い |
その他の所得:1,200(=20×@60) キャピタルロスとして繰越欠損金:800(=20×@40) |
2025年5月の株式売却 |
キャピタルゲイン:1,500(=50×(@70-@40)) 昨年度の繰越欠損金:800 繰越欠損金の相殺後のキャピタルゲイン:700(=1,500-800) |
上記の【事例】からも分かる通り、持ち分を自己株買いされた株主は元々の株式の取得費を自己株買いの対価と相殺できず、繰越欠損金として繰越し翌年以降に発生するキャピタルゲインと相殺する必要があります。ただ繰越欠損金は8年のみ繰り越せる規定であることを考慮すると、8年以内に別の株式を売却しキャピタルゲインを発生させないといけないという状況になり、株式を長期保有しようとする投資家精神と反する制度と言えます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |