Form10Fとは、インド所得税法第90条・90A条に基づく、租税条約に規定された軽減税率などの恩典を受ける際に必要となる自己申告形式の様式です(インド所得税法細則第21AB条)。租税条約の相手国の税務署の発行する居住者証明書(Tax Residency Certificate - TRC)に下記(i)及び(iii)~(vi)が記載されている場合には、Form10Fの作成は不要です(インド所得税法細則第21AB条2項)。ただ、日本の居住者証明書には(iv)税務番号が記載されていないため、日印租税条約を使用する場合にはForm10Fの作成が必要です。
租税条約の軽減税率を利用して支払を受ける非居住者は、当該様式に基づいて支払者(インド居住法人)に対して必要情報を提出します。主な記載事項は以下の通りです。
(i)個人・法人の区分
(ii)PANカード情報(保有している場合)
(iii)国籍又は登記されている国
(iv)税務番号(Tax Identification Number)
(v)対象年度
(vi)住所
様式は、コチラからダウンロード可能です。
非居住者によるForm 10Fの電子申請義務に関する緩和
従前までは紙面で作成していたForm10F に関して、直接税中央委員会は2022 年7月16 日付で通達(03/2022)を発し、Form10F を電子申告することを求めていました。ただし、納税者番号(Permanent Account Number - PAN)を取得していないかつ取得する義務のない外国法人はForm10F の電子申告義務が2023 年9 月30 日まで免除されていました。しかし、この免除規定に関するさらなる延長は発表されておらず、外国法人であっても2023 年10 月1 日よりForm10F の電子申告が求められます。
Form10Fの電子申告
Form10F の電子申告はインド所得税ポータル上にて行いますが、電子申告するためには法人のPAN を取得した上でポータル上でのアカウントの作成が必要になります。実際にForm10F を電子申告する際は、紙面のForm10F 及び居住者証明書をPDF ファイル形式でアップロードします。なお、PAN 取得後には外国法人はインドでの課税所得に対して税務申告が毎年必要になる点にご留意ください。
<外国法人に求められる手続>
・法人PAN の取得
・署名権限者の電子署名証書(Digital Signature Certificate - DSC)の取得
・インド所得税ポータル上でのアカウント作成
・インド所得税ポータル上でのForm10F の電子申告
・インドでの税務申告コンプライアンス
電子申告後のForm10Fは居住者証明書及びNo PE Certificateと併せて、支払者(インド居住法人)に提出し、租税条約の軽減税率を適用してもらいます。Form10Fはインド所得税当局に提出する必要はありませんが、税務調査時等に当局の担当官から提出を求められた際には提出する必要があるので、自社で保管しておく必要があります(インド所得税法細則第21AB条2A項)。
Form 10F作成の際に、Tax Identification Numberが必要です。日本企業の場合、何の情報を提供すればよいでしょうか?
日本企業の場合、法人番号がTax Identification Number - TINに相当します。法人番号は、法人設立登記時に付与されるものですが、法人税の確定申告の際に申告書に記載されているものです。その他当該番号の確認方法としては、登記簿謄本(現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書)に会社法人等番号として記載されています。
自社の番号が不明な場合は、国税庁のホームページから検索することも可能です。
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |