事前裁定制度(Board for Advance Rulings - BAR)は、取引を実行する前、または実行済みの取引について、インド所得税法上の課税関係をあらかじめ公的に確認する制度です。特に、非居住者やクロスボーダー取引について、通常の税務調査、不服申立てに入る前に、法律問題または事実問題について判断を得ることを目的としています。2021年9月までは(Authority for Advance Rulings - AAR)と呼ばれていました。
BARの活用場面
非居住者や外国法人は、特に以下の場面でBARが有用です。
- インド進出前の投資ストラクチャー確認
- 非居住者への支払に関する源泉徴収税の判断
- PE認定リスクの確認
- 租税条約適用可否の確認
- ロイヤルティ、技術上の役務に対する料金(Fee for Technical Services - FTS)、ソフトウェア対価等の課税分類
- 一般的租税回避否認規定(General Anti Avoidance Rule - GAAR)リスクの事前確認
なお、BARは非居住者のみならず、一定の要件(10億ルピー以上の案件)を満たす居住者も利用をすることが可能です。次のものについては申請が却下されます (1961年インド所得税法第245N条b、第245R条2項 但し書きの1)(2025年インド所得税法第380条b、第384条3項)。
- その申請者の同一の問題がすでに所得税当局、税務審判所(Income Tax Appellate Tribunal – ITAT)または裁判所で検討されているもの
- 資産の公正市場価値の算出に関するもの
- 租税回避を目的としたもの
裁定の効果は、原則として、申請者、対象となった特定の取引、および当該申請者・取引を管轄する所得税当局に限定されます。裁定の前提となった法律または事実に変更がある場合、その拘束力は維持されません。つまり、BARの裁定は「一般的な判例」として全納税者を拘束するものではありません。また、BARの裁定内容に異議があるときには、所得税当局、申請者のいずれも高等裁判所へ請願を行うことができます。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


